テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
美花の後を追い掛けた圭は華奢な手首を掴み、引き止めようとするが、彼女は強引に前進し続ける。
「美花っ! 待てっ!!」
「…………っ!」
圭の制止にも構わず、美花は歩みを止めようともしない。
南口の駅ビルの前を通り、キャバクラや飲食店が多く入店する雑居ビルを過ぎていくと、その先にはラブホテルがある。
「美花! どこへ行く気だ!?」
美花は躊躇う事なく古めのラブホテルに入っていくと、空室の部屋を適当に選び、キーを受け取る。
ずっと黙ったままの美花に、圭は彼女の手首を掴んだまま、行動を注視するしかできない。
怒りに任せたように、彼女が乱雑にキーを開錠させて、部屋に入っていく。
圭は大きくため息を零すと、仕方なく美花の後に続いた。
温かな色合いの間接照明が、柔らかく照らされた室内は、意外にも落ち着いた雰囲気だった。
奥には年季が入っていそうなダブルベッドが鎮座し、部屋の右手にはバスルームとトイレ、左手にはクローゼット。
ベッドの手前にはダークブラウンのソファーとガラス製のローテーブル、薄型のテレビが設置されている。
美花が圭の手を振り離すと、ソファーの上に荷物を放り、彼に背中を向けながらベッドの前に立っていた。
「……美花。何か…………あったんだろ?」
「…………」
圭は、努めて穏やかな声で問い掛けたが、美花は返事をしない。
「美花。何が…………あったんだ?」
なかなか言葉を発しない彼女に、圭は眉間に皺を寄せると、若干苛立ちを感じながらも、感情を抑え込む。
ソファーセットを挟み、立ち尽くしている二人の距離感が、圭にとって、もどかしい。
美花が俯き、フゥーッと息を長く吐き出した。
まるで、何かを決意したかのように。
勢い良く顔を上げた美花が、ゆっくりと振り返り、圭と向かい合う。
彼がプレゼントしたネックレスのペンダントトップを、美花が右手でキュッと掴むと、圭は、揺れ動く薄茶の眼差しを振られた。
「圭ちゃんは…………私の事……好き……?」
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
恵