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#ヤクザ
夏目萌*優しい彼~コミカライズ
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恵
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うわあ……第225話、ついに圭が自分の意志で「DTM事業部に残る」って父に伝えたんですね。武社長の「そろそろ『こっち』に戻ってこないか?」に、心が揺れながらも「私はこのままDTM事業部で」と返すシーン、じんわりきました。人生36年で初めて自分でレールを敷き直した瞬間――美花さんの影響が大きいってのも泣ける。父も最後は「好きにしろ」と認めてくれて、親子の距離感がほんの少し変わったのが伝わってきます。
「圭。『旅先』で、いい仕事をしているようだな」
『ミュージックテラー』がリリースされる前日である、六月の最終金曜日。
圭は、ハヤマ ミュージカルインストゥルメンツの社長でもあり、父でもある武に、社長室へ呼び出されていた。
「ええ。とても『充実した旅』を満喫しております」
「……そうか」
武は、窓の向こうの青空に視線を伝わせながら、戸惑いがちに、口元を震わせる。
「…………お前を副社長から降格させ、DTM事業部に異動させてから、一年半くらいになるのか。早いものだな……」
「ええ。あっという間でした」
言葉が少ないまま、時間が淡々と流れていく中、武が徐に口を開く。
「圭。そろそろ…………『こっち』に戻ってこないか?」
「…………」
父の言葉を聞き、圭の心と目元が揺れたが、彼の胸中は既に決まっている。
「社長。お言葉ですが、私よりも優秀な人材は、ハヤマにたくさんいます。企業のツートップを身内で固めるよりも、副社長の椅子は、彼らが座った方がいい、と、業務を通じて考えるようになりました。それに……」
息子の意思に、父は思いもよらなかった事なのか、息を詰まらせた。
圭は、口を噤みながら顔を伏せたが、腹を決めて、社長に目を据える。
「私はこのまま、DTM事業部で業務を継続したい、と考えております。DTM事業部の社員と、もっといい仕事をしたい。彼らと、DTMの楽しさを広めていく所存です」
彼は、秘めていた決意を述べると、社長室に、張り詰めた空気が降りる。
眉間の皺を深く寄せている武に、鋭利な眼差しを突き刺される圭だが、彼も負けじと、父に視線をぶつけた。
父が敷いた、『人生』という名のレールから外れたいと、ようやく口に出せた圭は、ホッとしたのか、頬が緩みそうになってしまう。
かつての彼は、線路の上を歩く事に疑問すら持たず、当たり前の感覚だった。
しかし、DTM事業部に異動し、仕事をしていくうちに、与えられた人生を歩んでいく事に、初めて疑念を抱くようになった。
人生約三十六年で、初めて自らの意思でレールを敷き、その上を辿々しくも前進したいと思えるようになったのは、美花の影響が大きい。
「…………分かった。お前の好きにしろ」
ひとしきり重苦しい情調の中、社長が、苦虫を潰したような面立ちを覗かせながら、言葉を結んだ。
「社長。ありがとうございます」
仏頂面の父に対し、神妙な表情を浮かべ、背筋を伸ばして深々と頭を下げる息子、圭。
「それでは、失礼します」
ドアの前に進み、踵を返した彼は、再度、社長の武に一礼すると、静かに退出した。