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来世はくらげ
#ダークファンタジー
「 壊れかけの笑顔 。 」
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少年はよく笑う。
『ねえ、お前ってさ』
隣を歩きながら、楽しそうに話しかけてくる
『終わらせるだけなんでしょ?』
「ああ。」
『つまんなくね?』
「……分からない」
即答だった
少年は一瞬だけ黙って、それから小さく笑った
『そっか、分からねえのか』
その声はさっきより少しだけ静かだった。
『…じゃあさ』
少年は前を向いたまま言う
『これから俺と分かろうな!』
「……?」
意味がわからない。
だが、それ以上考える前に……
「……!」
空気が変わる
重く、濁った気配。
「……来る」
俺が言うより早く、
『…うん』
少年も同じ方向へ向いていた
路地の奥
人影が、ゆっくりと歪む。
骨が軋む音
肉が裂ける音
…これは、 “歪者” だ。
───だが、
「……こいつ、強い。」
形が安定している
崩れ切ってない。
喪失者に近い。
「……下がってろ」
『…やだ。』
少年はあっさりと言った
「…闘いの邪魔だ」
『邪魔しないって』
そう言いながら少年は、そのまま1歩前へ来た
「……!」
『……』
その瞬間、空気が歪んだ
少年の周りだけ、何かが歪む。
『…これくらいなら───』
軽く手を上げる
歪者の動きが、一瞬止まる。
「……喪力か。」
『まあ、そんな感じ』
軽い口調。
だがその力は、どこか不安定だった
押さえ付けているような
繋ぎ止めているような、そんな気がした
「…無理をしているな」
『してないって』
少年はそういいながら軽く笑う
だが、
その目だけが揺れていた。
「……」
次の瞬間、
【 なんで…なんで、分かってくれないの…!! 】
「………! 下がれ!!」
『……っ!』
少年の体が、わずかにぐらつく
「…終わらせる」
踏み込む
一気に距離を縮める
「……」
触れる
それだけで───
歪者は崩れた。
音もなく、
何も残さず。
『……ほら、邪魔してないでしょ?』
「……」
違う。
これは、無理をしている笑い方だ。
「……お前」
『なに?』
言葉が出てこない。
分からない。
何を言えばいいのか。
ただ、
「……一人で、背負うな」
気づけば、そう言っていた
少年は一瞬だけ目を見開いた
それから、いつも通り笑った。
『別に、背負ってないって〜!』
─── 嘘だ。
でも、それ以上は言わなかった。
まだ分からない。
何をすべきなのか。
ただひとつ、
確かなのは───
この少年は壊れていないようで、
壊れかけている、ということだった。
「……おい」
『ん〜??』
俺は、こいつに事情説明をすることにした
「……ここは、危険だ。
お前は逃げるといい。」
少年は、少し黙った
『…じゃあさ、ついて行けばいい?』
ついていく。
その発想が分からない
危ないと言った相手に、なぜ付いてくる?
「……理由がない」
『あるよ、ある』
「ある」 という少年は俺にこう続けた
『…ここ、ちょっと退屈なんだ』
その言葉は、どこか軽くて。
どこか寂しそうだった。
「……好きにしろ」
『決まりね』
歩き出そうとした その時、
「……お前」
思わず、口が動いた
「名前は」
『…ああ、名前?』
少年は少し考えながら
『Laia 。レイアだよ!』
そう答えた
「……Laia…」
その名前を頭の中で繰り返す
『…じゃあ、お前は?』
逆に問われる
少しだけ間が空いた
「……シキ。」
『ふーん、変な名前』
少年は笑った
その笑い方は軽くて、
なのに、どこか消えそうだった。
──── その名前を聞いたのが、
すべての始まりだった
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