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買い物を無事に終え、メンシスとカーネがシェアハウスに戻って来た。
「只今戻りましたー」と大きめの声で言い、メンシスが玄関ドアを開ける。室内に人の気配は無かったが、入ってすぐの所に大きな木箱が何個も積み重なって置いてあった。
彼に続いて中に入ったカーネが山積みの荷物に驚き、「……随分沢山の箱がありますね」とこぼす。ララもそれを見上げて『あラ、本当ネ』と言い、隠れてカカ様の物を随分と勝手に色々買ったのネと少し呆れ顔だ。
「先程の買い物の時に注文した品物以外にも、定期的に頼んでいる食材とかも同時に届いたみたいですね。いやぁ、受け取ってくれるヒトが居るタイミングで持って来てくれていたみたいで運が良かったです」
ニコッと笑みを浮かべながら、メンシスはさらっと嘘を口にした。物品補給の品は勝手に置いていって良いと部下達には伝えてあるので、今回はその通りにしているだけだ。だがこう言っておけば、さも自分達以外にもちゃんとシェアハウスには住人が居る様に感じられるだろうとの考えである。
「そうですね、この量をまた一度持って帰るとなると……お店の人も大変ですものね」
何食わぬ顔で、「ははは、確かに」とメンシスはカーネに返した。
ヒト一人簡単に入ってしまいそうな箱が何個も積み上がっている山を見上げてカーネは、これらをどうやって運ぶんだろう?と不思議に思う。
「食材はこれとこれで、こっちの箱は仕事着が入っているみたいですね。んで、その奥は日用品っと——」
それぞれの箱に貼ってある紙をメンシスが確認する。一箱一箱を軽々と持ち上げて中身を把握していくと、最後は木箱の方へ手をかざし、それらを一気にそれぞれを別々の場所へと空間移動させた。その様子を見て、こんなに大きな箱をどうするのかと気になっていたカーネが、『なるほど』と納得する。疑っていた訳ではないのだが、魔法も神力も、両方使えるという話しは本当だったのかと感心するばかりだ。
「じゃあ三階へ行きましょうか。寝室に移動させた箱の中身はほぼ全て貴女の物のはずなので、この後片付けておくといいですよ。その間に僕はお風呂を沸かしておきますので」
「それなら私がやりますよ」とカーネが申し出たが、「いえいえ。結構片付ける物の量も多いでしょう?」と返されると『確かに』と思えてくる。
鶏肉の串焼きを食べた後に回った店々でカーネは、下着やら私服やらと日常的に使う物を色々多めに買い足したので片付ける量が結構多い。下着を選ぶ時にはララが、それ以外の物を選んでいる時にはメンシスが『あれも似合う』『これの素敵だ』と色々持って来ては、『買いましょう!』と押し切られてしまったので結果的にどれも、とんでもない量になってしまったのだ。
結局、どの店でも彼に出してもらっているので合計金額が把握出来ていないのだが、高額になっていそうだなと思うと、総額を聞くのがちょっと怖かった。
寝室にあるクローゼットの中に買った物の収納を終え、カーネがリビングに顔を出す。メンシスも三階に移動させた箱の中の物の片付けを丁度終えた所の様だった。ララは何処だろうか?とカーネが周囲を視線だけやって探したが、リビングには見当たらなかった。
「お疲れ様です」
「そちらも、お疲れ様でした」
互いに労いの言葉をかけ合い自然な流れでソファーに腰掛ける。高身長なメンシスと共に座るにはやはりちょっと狭く、今回もまた脚がぴたりとくっついていた。
「そうだ、先程立て替えて頂いた私物の分をお支払いしたいんですが、おいくらですか?」
「あぁ、それに関しては別にいりませんよ。仕事を始める前の準備費用としてお納め下さい」
「…… 。——いやいやいや、流石にそれは!」
当然顔で言われると、一瞬『そういうものなの?』と流されそうになったが、そんな訳がないと気が付き即座にお断りを入れる。内心、メンシスが『チッ、流されなかったか』と舌打ちをしたい気分になったが、彼の表情は一切変わらなかった。
「では、今後の給与から少しづつ天引きしていくというのはどうでしょうか?僕も正確な合計額はそれぞれの請求書を調べてみないとわかりませんし、そこそこの金額にもなっているでしょうから。何かあった時の為にも、現金は大事にしておいた方がいいですよ」
「成る程。確かに、一理ありますね。ではそれでお願いします」
「はい、お任せ下さい」と不自然な程眩しい笑顔をメンシスは浮かべた。
当然、彼はカーネの給与から天引きするつもりなど更々無い。
彼が今まで転生する度に貯め込んできた資産は全てこの為の物だ。散々贅沢に贅沢を重ねたとしても、メンシスの個人資産だけで人生を五回程やり直してもまだまだお釣りがくる。セレネ公爵家の資産をも全てとなると何十度目の転生をもカバー出来るのかは計算するのも面倒な程に貯めてきたので、貢ぎたい衝動が抑えられないでいる。
「そうだ。お風呂に入る前にマッサージでもどうですか?沢山歩いたからお疲れでしょう?」
パンッと軽く両手を叩き、メンシスが提案する。するとカーネが骨髄反射的に「私がシスさんにやります!」と挙手でもしそうな勢いをつけて意気揚々と返した。
「……」
(……私に?彼女が?……マッサージを?)
一瞬思考停止したメンシスだったが、ゆっくりと前屈みになっていく。『マズイな。想像だけで勃った……』と、ついこぼしそうになるのを耐えて少し赤くなった頬を手で隠す。自分の体に触れてもらえると考えるだけで体が先に反応してしまい、卑猥な妄想に発展しそうにもなった。
「……でも実はその、やった事がないので、上手くやれるかわかりませんけど。色々教えてもらえますか?」
身長差のせいで、彼を見上げるカーネの姿が上目遣いをしておねだりをしている様に感じられた。『言い方!』と叫びたくなるのも耐え、「じゃあ、お願いします」という言葉をメンシスが必死に捻り出す。
だが、アレやコレやといやらしく全身を使って脚のマッサージをしてくれている彼女の痴態がどうしても頭に浮かんでしまい、メンシスは少しの間まともにカーネの顔を見る事が出来なかった。