翌日、優羽は仕事が休みだった。
優羽が休みの日は、朝の配膳の手伝いにパートの誰かが代わりに入ってくれている。
フロントの仕事も紗子がやってくれているので心配はなかった。
優羽はベッドからゆっくりと起き上がると、窓の外を眺める。
窓を開けると、朝のひんやりした空気が心地よかった。
その後流星が起きてから二人は厨房の隅にあるスタッフ用のテーブルへと行った。
優羽は三橋夫妻に挨拶をしてからトーストを焼き始めると、今日も三橋が二人の為にベーコンエッグを作ってくれた。
優羽は喜びながらお礼を言った後、流星と二人三橋のベーコンエッグと食べ始める。
流星も今日は保育園が休みだったので、久ぶりにのんびりとした朝を過ごすことが出来た。
朝食を終えてフロントへ行くと紗子が雑務をこなしていた。そして二人に気付くと、
「流星君おはよう。今日はママもお休みだからいっぱい遊べるわねー」
そう流星に話しかけた。
すると流星は満面の笑みで言った。
「きょうはね、ままとおかいものにいってくるよ」
「よかったわねぇ。お買い物は久しぶりじゃない? ゆっくり楽しんでいらっしゃい」
流星はニッコリして大きく頷いた。
そこへ、大きな荷物を抱えた岳大と井上がやって来た。
二人は紗子がいるカウンターでチェックアウトを済ませると、
井上がいくつもの重そうな荷物を車へ運び始める。
岳大は優羽と流星の傍へ来るとしゃがんで流星に言った。
「流星君、僕はこれから東京へ帰るからね。ママの事をしっかり守ってあげるんだよ」
と言って流星の頭をポンポンと撫でる。
「うん! おとこがおんなのこをまもらなくちゃだよね。やくそくしっかりまもるよ」
流星は岳大を見て誇らしげに言った。
それを聞いた優羽は驚いていた。いつの間に二人でそんな会話をしていたのだろうか?
優羽が不思議に思っていると、岳大が手に持っていた紙袋を優羽に渡した。
「お世話になりました。これ、よかったら後で開けてみてください。じゃあ仕事の件よろしく!」
岳大は笑顔で言うと、もう一度流星にバイバイと手を振り車へ向かった。
優羽と流星が玄関の外まで見送りに出ると、紗子もやって来て三人で岳大達を見送った。
「優羽ちゃん、仕事の話聞いたわよ。あなたはまだ若いんだからこれから色々なチャンスがあるはず。だからやりたいと思ったら迷わずチャレンジしなさいね」
紗子はニコニコして言うと、帽子をかぶって花壇の手入れに向かった。
流星も子供用のおもちゃのシャベルを持って、嬉しそうに紗子の後をついて行く。
優羽は部屋に戻ると、岳大から受け取った包みを開けてみた。
その中には二つのフォトフレームが入っていた。どちらも優羽好みのナチュラルブラウンの木製フレームだった。
優羽はフォトフレームを裏返して、中に入っている写真を見た。
そのうちの一枚は、岳大のカメラで優羽が撮った星空だった。
優羽の写真に岳大が画像加工を加えた事によりさらに天の川が濃く写っている。
それは初めて撮った写真とは思えない程素晴らしい仕上がりになっていた。
優羽はその写真を嬉しそうに見つめると、もう一つのフォトフレームを裏返した。
それは優羽と流星が二人で写っている写真だった。
優羽が笑っているすぐ後ろで流星も笑っている。
この時優羽は自分の写真を見て驚く。
そこには少女のように無邪気に笑う自分がいた。
自分がまさかこんな表情をしているなんて思いもしなかった。
次の瞬間、優羽はその二つの写真を強く抱き締めた。
抱き締めながらなぜか涙がとめどなく溢れてくる。
優羽はしばらくの間、声を押し殺して泣き続けた。
なぜだかわからないが、無邪気に笑う自分の顔を見て泣けて泣けて仕方がなかった。
優羽が一人ひっそりと泣いている間、
窓の外の小川のせせらぎが、まるで優羽の心を慰めるかのように優しい水音を奏でていた。
コメント
6件
脱字かな?「優好みの」→「優羽好みの」 コメント欄以外に書く方法あるのかな?未だよく分からなくてごめんなさい🙇♀️修正されたら削除してください。
ぅうー😭🍀岳大さん最高の🎁✨ 優羽チャン🥹今までいろんなこと抱えながら、1人で流星くんを育てて頑張ってきたもんね😭やっと泣けたんかな🥹思い切り泣いて、 夢に向かって頑張ってね💪✨ お母様、お兄様、山荘の方々、岳大さん、みんなが見守ってくれとるさかい大丈夫🥹🍀✨✨✨
我慢してたんだね… この涙が落ち着いた頃には、新しい優羽ちゃんになってると思うな𓂃꙳⋆ ˖*˘◡˘*