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#勧善懲悪
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ローレリーズの店の奥には、いつもより少し大きな丸いケーキが置かれていた。
白いクリームの上に、雨粒みたいな飴細工が並んでいる。中央には赤い飴がひとつだけ光っていた。
「レッドタイガーアイのつもり?」
マイナが聞くと、ローレリーズは肩をすくめる。
「食べられる石の方が平和でしょ」
その通りだった。
公民館の一室では入りきらず、祝う席は公園のそばの広場で開かれた。派手な勝利会ではない。けれど、立ち止まっていた人がまた前へ歩き出す、その最初の小さな晩餐だった。
ピットマンは最初から皿を二枚持っている。
「全力投球で食う!」
「食べるだけで投球するな」
トルードが呆れる。
笑い声の混じる中、少し離れたところでキオノフとルドヴィナが並んでいた。
前なら、人目を避けていた距離だ。
今日は隠れない。
キオノフが紙皿を差し出す。
「先にどうぞ」
「そういうとこ、昔から変わらないね」
ルドヴィナは受け取りながら言う。
「変わらない方がいいところもある」
「……うん」
その短いやりとりを見たエリアが、満足そうに鼻を鳴らした。
「ようやく、って感じ」
ズジは冊子の束を配りながら、来た人たちの表情を見ていた。
昨日までなら目をそらしていた者どうしが、今日は同じケーキを分けている。
ローレリーズは皿を持ったまま、大きく言う。
「祝いは先にやっとくもんだよ。しんどい後始末は、腹が減ってると続かないからね」
その理屈もまた雑だったが、誰も反論しなかった。
夜風が少し甘い匂いを運ぶ。
サペはその中で、隣に立つエリアを見た。
勝ったあとに、ちゃんと笑える。
それは奪う側にはたぶんできないことだと、サペは思った。