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蓮司「おーい、今日のテーマは“季節あるある”で行くぞ!」
日下部「……なんでそんな司会者っぽいんだ」
蓮司「気分だ! じゃまず“夏祭りあるある”から。金魚すくい、取れた試しない!」
日下部「ああ、あれは取れない前提だよな。ポイがすぐ破れるし」
蓮司「そうそう! で、破れて水だけすくうやつ!」
遥「……俺は、連れていってもらったことない」
蓮司「……え?」
遥「夏祭り。行ったら叱られるから、家でじっとしてた。だから“あるある”なんて知らねえ」
日下部「……」
蓮司「お、おう……。でも、ほら! 今ここで疑似体験すりゃいいんだよ!」
遥「疑似?」
蓮司「俺が屋台の兄ちゃん役やって、遥が金魚すくい挑戦! 『あー残念、すぐ破れた~!』ってな!」
遥「……バカみたいだな」
日下部「でも、想像するだけでもちょっと楽しめるんじゃないか」
遥「……そうかもな」
蓮司「おっ、素直に肯定した! 珍しい!」
遥「素直じゃねーよ。ただ……“もし行けたなら”って考えるのは、悪くない」
日下部「その“もし”を語れるのが、この部屋のあるあるだな」
蓮司「おおー、名言っぽい!」
遥「やめろ。変に持ち上げるな」
蓮司「はいはい。じゃ次、“冬休みあるある”! 宿題、絶対最終日に詰め込む!」
日下部「……俺は毎年計画的に終わらせてたけど」
蓮司「え、マジ? お前そういうとこ真面目すぎだろ」
遥「俺は……冬休みは休みじゃなかった」
蓮司「……」
日下部「家のこと?」
遥「ああ。手伝わされて、殴られて。だから宿題なんかやる余裕なかった」
蓮司「……そうか」
遥「“あるある”ってやつは、俺にとっては“なかったこと”なんだよ」
日下部「でもな、遥。それを“なかった”ってここで言えるのは大事だと思う」
蓮司「そうそう。俺らが“あった”って話すのと、遥が“なかった”って話すの、両方で“あるある部屋”なんだよ」
遥「……強引すぎる理屈だな」
日下部「でも、嫌いじゃないだろ」
遥「……まあ、少なくとも黙ってるよりはマシだな」
蓮司「よっしゃ! じゃあまとめ! “夏祭りあるある”は『金魚すくえない』、“冬休みあるある”は『宿題は結局終わらない』!」
日下部「俺は終わらせてたけど」
蓮司「そこは空気読め! そして“遥あるある”は――」
遥「やめろ。変な枠作るな」
蓮司「――“なかったことを、ここで話せる”!」
日下部「……いいまとめだ」
遥「……お前ら勝手だな」
蓮司「勝手で結構! ここはそういう場所だから!」
遥、口元だけ、かすかに笑う。
“あるある”の形は三人三様。
けれど、共有された今だけは、同じ季節の中にいた。
※3人で夏祭り行った回、どっかで書いた気が……ま、それはまた別の話(は?汗