島村に抱き抱えられたまま、理紗子の視界はグワングワンと激しく揺れていた。
目を開けてもまっすぐ歩けない。こんな事は初めてで、自分でもどうしていいのかわからなかった。
エレベーターの前に行くと、ちょうどエレベーターが到着したので二人はすぐに乗り込んだ。
エレベーターに乗った際、島村が理紗子の耳にキスをしてきたが理紗子にはそれを跳ね除ける力も残っていなかった。
島村は理紗子が抵抗出来ない事を知ると、今度は理紗子の尻に触って来た。
理紗子は自分の尻が力強く揉まれているのを感じたが、やはり身体の自由が利かずに声も出せない。
頭の思考も全く働いていなかった。
とにかく今は一刻でも早くベッドに倒れ込みたい。
すると漸くピンポーンという音が鳴り、エレベーターは理紗子の部屋がある最上階へと着いた。
エレベーターの扉が開くと、外には男性が一人立っていた。
男性はエレベーターから酔い潰れた女性を抱えた男性が降りて来たので、道を譲ろうと脇によけた。
そしてすれ違う際、二人をチラリと見てからもう一度女性の方を二度見する。
そこに立っていた男性は、健吾だった。
健吾は今日の最終便で石垣島に到着した。
東京でいくつかの仕事を片付けた後、その足ですぐに羽田空港へ向かった。
しかし石垣島への直行便には間に合わず、仕方なく那覇経由の最終便で石垣島へやって来た。
午後九時頃にはホテルに着いていたが、部屋に入った途端電話につかまり先ほどやっと解放された。
そしてフロントへ行き明日以降のレンタカーの手配をしようと思ったらこの場面に遭遇した。
そうしたらエレベーターから酔いつぶれた理紗子が出て来た。
それも見知らぬ男性に抱きかかえられて。
最初は女性の方を見ていなかったので全く気付かなかったが、もう一度見たらその女性が理紗子だったので、健吾はかなり驚い
た。
(一緒にいる男は一体誰なんだ?)
訝いぶかし気な顔のまま健吾は島村に言った。
「あの、その女性は僕の連れなのですが…….」
健吾の言葉に島村はまさかそんなわけないだろうという顔をしてから言った。
「彼女は一人でこちらに来られた方ですよ? 人違いでは?」
「いや、間違いないです。酔いつぶれた女性をどこへ連れ込むおつもりですか?」
健吾の言い方にムッとした島村は、
「僕は彼女の了解を得て一緒にいます。だから何も問題はありません」
「じゃあ伺いますが、あなたは彼女の名前をご存知ですか?」
「水野さんです」
「下の名前は?」
「……….」
「女性を歩けなくなるまで酔わせて部屋へ連れ込むなんて最低だぞ! このホテルはそういうホテルじゃない! フロントに通
報されたくなかったら今すぐ消えろ!」
健吾はものすごい形相で言った。とても気迫に満ちていた。
島村はさすがにまずいと思ったのか、部屋のカードキーを握ったまましなだれかかる理紗子を健吾に押し付け、
「チッ!」
と舌打ちし、逃げるようにエレベーターに乗り込むと下の階へ降りて行った。
(あいつはこの階じゃないのかよ! って事は彼女の部屋に入り込もうとしていたんだな。とんでもない野郎だ)
健吾は怒りを露わにしながら、自分に抱き着くようにしなだれかかっている理紗子を見た。
そして、
「しょうがねぇなぁ」
と呟くと、理紗子を抱き上げてから一番奥のオーシャンスイートルームへ向かった。
健吾は部屋のドアを開けると理紗子を抱えたまま部屋へ入る。
健吾の泊っているこの部屋は、このホテルの中では一番豪華な造りになっていた。
エメラルドグリーンの海が見渡せる角部屋で、広いバルコニーにはジャグジーも備わっている。
部屋は広いリビングルームとベッドルームに分かれていて、どちらの部屋からも美しい海を一望できた。
健吾は以前からこのホテルをよく利用していた。
投資家仲間の男友達とは、毎年のようにこのホテルへ泊まりに来ている。
その目的は忘年会や新年会、そして健吾の趣味である釣りを目的としたものであったりと理由は様々だ。
だから健吾はこのホテルの事をよく知っていた。
過去に付き合った女達とこの島に来る時は、このホテルは利用しない。
その理由は、女達は日焼けする釣りには全く興味を示さなかったからだ。
彼女達は美しい景色よりも、ホテルの部屋で健吾を独占する事に価値を見出していた。
出かけたとしても、買い物や話題のレストランにしか興味を示さなかった。
彼女達の外出の目的は、繁華街を二人で歩き自分が健吾の恋人である事をアピールする為のもの、
もしくは健吾に何かをおねだりする為のものでしかなかった。
だから女とホテルに泊まる時は、空港や繁華街に近い航空会社系列のホテルと決めていた。
一時期感染症が大流行し、このホテルにもぱったりと観光客が来なくなり、経営の継続や従業員の確保が懸念されていた時期が
ある。
それを人づてに聞いた健吾は投資家仲間達に呼び掛けて、かなりの資金を集めてホテルへ寄付した。
その縁もあり、今回みたいに急な時には直接支配人に連絡を入れると快くこのスイートを空けておいてくれるのだ。
健吾は部屋に入ると、そのまま奥のベッドルームへ向かった。
キングサイズのベッドへ理紗子を下ろそうとした瞬間、理紗子は健吾の首に両腕を巻き付けながら、
「うぅんっ…….行かないで…….」
と、甘えた声で懇願する。
健吾は驚いて理紗子の顔を見たが、どうやら寝言だったようだ。
理紗子は無邪気な顔をしてスースーと寝息を立てている。
しかし目を瞑った理紗子の目尻に涙が光っているのを健吾は見逃さなかった。
健吾はしばらく理紗子の寝顔を見つめていた。
すると、理紗子が暑いと訴えるようにブラウスの襟元を引っ張り寝苦しそうに身をよじったので、
理紗子のブラウスとワイドパンツを脱がせてやると、軽く布団をかけてからベッドルームを後にした。
コメント
4件
健吾が来てくれて本当に良かった😱😱💦 理沙ちゃんも小説リサーチで一生懸命だったけど、これはー健吾からの注意orお叱りがあっても仕方がないね😅 その前にその格好で寝てて飛び起きちゃうパターンだね🥹
健吾さんってかっこいい~梨沙子さん良かったね(^-^)一緒に過ごせる様に願ってます。
健吾〜〜〜来たよ〜〜〜😭 待ってたよ〜〜〜😭 理紗子ちゃんを優しく叱ってそして楽しい時間を一緒に過ごしてあげて〜‼️ あっ🤭もちろんそのつもり…ハイそうですよね❗️失礼いたしました(*ノ>ᴗ<)テヘッ