そして翌月華子はハワイにいる陸の家族へ会いに行く事となった。
二人は今ホノルル行きの飛行機に搭乗中だ。
機内ではキャビンアテンダントが食事のサービスを開始した。
それを見つめながら華子は以前機内で偶然再会した元義理の妹の栞の事を思い出していた。
栞は母の弘子がたった数年間だけ再婚していた相手の連れ子だった。栞は現在キャビンアテンダントとして働いている。
栞は華子とは違い物静かで謙虚でとても聡明な子だった。
コツコツ努力をしていた栞はキャビンアテンダントという夢を掴んだ。
以前再会した時、栞は夢を叶え生き生きと働いていた。
華子はその時の栞を思い出しながら陸に言った。
「陸、私ね、通信教育で保育士の資格を取ろうと思うの」
食事を食べていた陸がナイフとフォークの動きを止めて言った。
「素敵な決断じゃないか。やりたい事があるならどんどんチャレンジすればいい、俺も応援するから」
「うん、ありがとう、頑張ってみる。でね、私には以前義理の妹がいたって話したわよね?」
「ああ、お母さんが再婚していた時だろう?」
「そう、その妹がね、キャビンアテンダントになっていたのよ。以前神戸に行く飛行機の中で偶然再会したのよ」
「へぇ…そんな事があったのか。で、何か話したのか?」
「ううん、あの時の私は本当に最低の女だったわ。彼女にクレームまがいの事を言ったりしてね、本当に嫌な女だったの」
それを聞いた陸はしばらく黙っていたが、その後静かに言った。
「済んでしまった事はどうしようもないさ。取り消そうったって取り消せないんだからな。ただ華子はちゃんと反省している。だからそれでいいんだ。もしまたどこかで妹さんに会う機会があったら、その時は思いやりを持って優しく接する事が出来るといいな」
「思いやりを持って優しく?」
「そう…..相手を責めるって事は結局自分を責めているのと同じなんだよ。逆に相手に対して思いやりを持って優しく接する事が出来ればそれは結局自分自身を大切にしているって事なんだ。だからもしまた会う機会があれば優しく出来るといいな」
「うん、絶対にそうする! でもまた会えるのかなぁ? もう会えないかもって思うから余計に後悔しちゃうのよね」
「だろ? 本意じゃない行動を取ると結局は自分を苦しめる事になるんだ。華子はもっともっと自分の事を大切にした方がいい。もっと自分を愛してあげないとな」
陸は微笑んで優しく言った。
飛行機がホノルル空港へ着陸すると二人は荷物を受け取ってから到着口を出る。
するとすぐに陸を呼ぶ声が聞こえた。
「お兄ちゃーん」
「陸っ」
二人が声の方を見ると二人の女性が笑顔で手を振っている。その傍らには男性もいた。
陸は笑顔で三人の元へ行くと声をかけた。
「よっ!」
「久しぶりー、いらっしゃーい! もうお兄ちゃんったら何度誘っても全然こっちに来ないんだもん! 待ちくたびれちゃったわよ」
30代くらいの女性はそう言うとプクッと頬を膨らませた。おそらく陸の妹だろう。
すると隣にいた男性が笑いながら言った。
「ハハッ、夏子はブラコンだからなぁ、お兄さん、やっと来てくれて嬉しいです」
すると今度は年配の女性が言った。
「陸、なんだか若返ったんじゃない?」
「ハハッ、そうかな? 母さん元気そうだね。ご希望通り彼女を連れて来たよ」
陸が華子を紹介すると、陸の母は感無量といった表情で華子を見つめた。
「華子さんですか?」
「はい、初めまして、三船華子と申します」
華子はそう言うとペコリとお辞儀をした。
「陸の母です。今日は遠い所をようこそいらっしゃいました」
母は嬉しそうに微笑んだ。
それから隣にいる二人を紹介してくれる。
「こちらが陸の妹の夏子です。そしてその夫の賢太郎さん」
「初めまして、島崎夏子です。お会い出来て嬉しいです」
「こんにちは、島崎賢太郎です。今日ははるばるようこそ」
「三船華子です。お会い出来て嬉しいです」
「お兄ちゃん、すっごく若くて美人な方じゃないのよぉー! どうやってこんな素敵な人を見つけたのよっ」
「本当ですよ。僕らよりもかなりお若いですよね?」
そこで陸の母が言った。
「華子さんは27歳なんですって?」
「はい、今年28になりますが」
そこで夏子が叫んだ。
「若いわー! あっ、ちなみに私は34歳なの。夫は41」
「陸さんと10離れているのですか?」
「そうなの。うちは父親が早くに亡くなったでしょう? だからお兄ちゃんが私のお父さん代わりだったのよ」
夏子は微笑みながら言った。
「ちょっとちょっとみんな、ここで立ち話もなんだから、レストランにでも行きましょうよ。華子さん、お腹空いているでしょう?」
「あっ、はい…」
「賢太郎さんが車で来てるからホテルに行く前に少しドライブをしてからレストランに行きましょうか?」
「はい」
そこで一同は駐車場へ向かった。
空港の外に出ると気温は高く頬を撫でる風が心地よい。温んだ空気が南国にいる事を実感させる。
華子はハワイは三度目だが最後に来たのは学生の時だったのでかなり久しぶりだった。
陸の家族にあたたかく迎えられてのハワイ旅行はきっと楽しい日々になるに違いない。
今華子は身も心も幸せの真っただ中にいた。
そして5人が乗った車は真っ青な空の下海沿いの道を快適に進み始めた。
コメント
2件
華子チャンは 機内で再会した元妹 栞ちゃんに八つ当たりし、 冷たく当たったことをずっと後悔していたのですね....🤔 心を入れ替え ちゃんと反省できるようになった華子チャン。 栞ちゃんと 再会して、今度こそは ちゃんと謝って仲直りできると良いね🙏🍀✨
ずーっと華子は栞ちゃんに対して辛く当たってきた過去を思い悩んでたんだね🥲でも陸さんがちゃんと解決策を導き出してくれたね✨ 相手に優しくすることが自分に優しくなんて思いもしなかったし、逆に相手を責めるとこが自分も責めてるなんて考えたことがなかったよ😥 やっぱり❣️華子は陸さんと本気で結ばれるべき人だったんだね👩❤️💋👩✨💖 本当におめでとう🎊🎉㊗️