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(教室を出た後、遥・日下部・蓮司が雑談部屋に集まっている。空気は静かだが、ぴりついている)
遥(床に座って体育座り。黙ったまま、シャーペンの芯をいじっている)
「……あの“描けるの?”ってやつ、どこが面白いのかマジでわかんね」
蓮司(椅子の背にもたれて、片手でペットボトルを振る)
「“わかんない”なら幸せじゃん。俺なんか、あれが“悪意”だって即答できるし。
面白くもないし、別に深くもない。浅いナイフ。使い捨て」
日下部(窓際に立ったまま、腕を組んでる)
「……あいつら、自分が正しいって思ってる」
蓮司
「思ってないよ。正しい“ふり”で防御してるだけ。悪口に“笑い”って保険かけてるだけ。
遥が何も言わないの、あいつら大好きだろ。殴ってこないサンドバッグって希少種だし」
遥(芯をパキ、と折る)
「別に…殴ったって治んないし」
蓮司
「治す気あるわけ?」
遥
「ないけど。……あるって言ったら、どうすんの」
蓮司(ニヤ)
「それ、俺に聞く? 一番向いてないよ。
“治す”とか“正す”とか、まじで興味ないし。
壊れるとこしか見てないから」
日下部(低く)
「……言いすぎだ」
蓮司(肩をすくめる)
「いや、俺ほんと優しいと思うけどなあ? “自分から壊れてくれる人”って、扱いやすいし」
(沈黙。遥は目を伏せたまま、何も言わない)
日下部
「……おまえ、遥をバカにしてんのか、守ってんのか、どっちだよ」
蓮司
「どっちでもないよ。ただ、“俺はそういう役割”ってだけ。
お前が“正面から向き合う”係で、遥は“口をきかない”係で。ほら、バランス取れてる」
遥(ぽつりと)
「……役割とかいらないんだけど」
蓮司
「じゃあ、もっと怒んなよ。
ぶちギレて机投げるとかすりゃ、ちょっとは神格化されるかもよ。
“闇を抱えてる孤高の反逆者”っつって」
遥
「うるせえ。お前、漫画読みすぎ」
(静かに笑いが漏れる。蓮司が喉の奥でクスッと笑う。日下部も一瞬だけ口元をゆるめる)
日下部
「……でも、あいつらのポスターより、遥の絵のほうがマシだと思う」
蓮司
「お。珍しくフォロー? まさかの好感度イベント発生?」
日下部
「ちげーし。事実言っただけ」
遥(シャーペンの芯の空ケースを持って)
「俺、絵なんか描いたことないけど……」
蓮司
「え、それでこの間“美術室の隅でずっと紙に何か描いてた”のは?」
遥
「……あれ、落書き。うまいとか、そういうのじゃない」
(沈黙)
蓮司(軽く笑って)
「……文化祭、マジで火事になんねーかな。
“燃やす”って字、入ってるくらいだし」
遥
「火事なら、おれが責任取る」
日下部
「バカ言うな」