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(放課後。雑談部屋。窓の外では部活の声。3人、なんとなく集まってる)
蓮司(ストローをくわえながらジュースを飲む)
「今日の体育、遥だけ見事に“ペアいない”芸披露してたな。あれ、狙った?」
遥(カバン抱えて丸まってる)
「……狙ってたら、もっとマシな顔してる」
日下部(教室から持ってきたノートを机に置きながら)
「誰も“おい、遥と組め”って言わなかったの、普通にヤバくねえか。先生もスルーだったぞ」
蓮司
「スルーというか、“便利”なんじゃね?
言い訳つかないレベルで誰にも好かれてない奴って、教師的には楽だし」
遥(静かに)
「……ほんとに誰も来ないと、逆に気ぃ遣われんだよ。
“可哀想な子に優しくしよう”って、顔だけ笑ってくるやつ。
あれ、殴るよりしんどい」
日下部(顔をしかめて)
「……そんなんばっかなんか、お前」
蓮司
「そんなんばっかっていうか、“そういう形でしか存在許されてない人”って、いるよな。
“耐えてるポジション”を崩したら、今度は叩かれるから。
結局、ずっと立たされてんだよ」
遥
「立ってたら、殴られんのも早いしな」
(静かに空気が止まる)
日下部(目を伏せたまま)
「……俺がずっと横にいたら、殴られんの遅くなる?」
蓮司(すかさず)
「優等生の善意、爆誕」
日下部(ムッとしつつ)
「黙ってろ。……本気で言っただけだ」
遥(ぼそりと)
「それ、横にいても見ないってこと? それとも一緒に殴られるってこと?」
蓮司(くすっと笑う)
「うわ、性格悪〜。けど、好き」
日下部(低く)
「……俺は、見てる」
(その言葉に、遥は少しだけ視線を向ける。でも何も言わない)
蓮司
「ま、いいんじゃね?
誰も殴らない代わりに、誰も止めない。
そんな世界で、“誰かが見てる”って、わりと奇跡だし」
遥(ぽつり)
「奇跡って……だいたい起きないから奇跡なんだろ」
(沈黙)
蓮司
「……で、今日のメシ、なに。話そっちのけで気になってたんだけど」
遥
「……冷凍のチャーハン。保冷剤と一緒に入ってたから冷たくて、固くなってた」
日下部
「弁当……お前が作ってんのか?」
遥
「いや。台所、使えない。だから……冷凍だけ食ってる」
蓮司
「冷たいチャーハン男子。そんなジャンル初めて聞いた」
(ほんの一瞬だけ笑いがこぼれる。でも、誰もツッコミはしない。いつものことだと知ってるから)