その後も二人は会話と共に食事を楽しんだ。
健吾は理紗子の家に入ってからリラックスしっぱなしの自分に気づく。
まだ知り合って間もない女性の家にいるというのに、なぜこんなに居心地が良いのだろうか?
元々健吾は自分の家以外ではリラックスできないタイプだ。
過去にも付き合っていた女達の家へは何度も行った事はある。
しかしいつも落ち着かなくてすぐに帰りたくなる。
例えその部屋が綺麗で完璧な状態であってもだ。
だから理紗子の家でここまでリラックスしている自分が不思議だった。
そしてここまで居心地がいいと、ずっとここにいたいような気分になる。
(こんな事今まであったか?)
過去の女達は手料理を食べてもらおうと豪華な料理で健吾をもてなした。
中には以前住んでいたマンションへ勝手に押しかけて料理を作り始める者もいた。
しかし、彼女達の手つきを見ていると日頃料理をしていない事が一目瞭然だった。
それでも女達は健吾の胃袋を掴もうと必死だった。
そんな気持ちで料理を作られても一気に冷めるだけだ。
いくら手の込んだ料理や豪華な食材を並べられても、健吾の心はまったく動かない。
残念ながら、今まで女達から作ってもらった料理を美味しいと思った事は一度もない。
だから健吾の胃袋を掴んだ女性は今まで一人もいないのだ。
しかし今日の理紗子みたいに家庭料理をサラッと出されると完全にノックアウトだ。
健吾の胃腸の事まで考えて糠漬けまで出してくれたのだ。
健吾の胃袋はもうすっかり理紗子に掴まれていた。
(男はこういうのに弱いんだよな)
そう心の中で呟くと、健吾はまた嬉しそうに糠漬けに箸をつけた。
健吾がもう一つ不思議だったのは、健吾と接する時に理紗子が全く緊張していないという事だ。
今まで健吾に接してくる女達は、皆過度に緊張していた。
過剰なくらいに健吾のご機嫌をうかがい、あの手この手で健吾の気を引こうとする。
しかし理紗子にはそんな様子は全くない。
もちろん、二人は本物の恋愛関係じゃないから健吾の過去の女達とは違うのかもしれない。
しかし健吾は自分に全く興味を示さない女性を見たのは、理紗子が初めてだった。
(俺は男として見られていないのか?)
健吾は急に不安になる。
今まで女に不自由しなかった男が焦っている。
そんな自分があまりにも可笑しくて、健吾は思わず苦笑いをする。
そこへ理紗子が話しかけてきた。
「この後のシメは雑炊にします? まだ食べられそうですか?」
「雑炊いいねぇ。食べたいよ」
健吾の返事を聞いた理紗子はキッチンへ行くと、ご飯と溶き卵と刻みネギを持って来て雑炊を作り始めた。
そして出来上がった雑炊を健吾の皿に取り分けると、
「どうぞ」
と言って前に置いてくれた。
早速健吾が食べると、
「うんまぁー!」
健吾はハフハフ言いながら、その熱々の雑炊を喜んで食べている。
(イケメンが子供みたいに食べているところなんてなかなか見られないから貴重だわ)
理紗子は微笑みながらそう思うと、自分も熱々の雑炊を食べ始めた。
コメント
3件
らびぽろさんに同感👍これはもう恋人の部屋の雰囲気でしょう😆💞それに健吾が理沙ちゃんに気持ち持ってかれてるから和むんだよ〜🌸理沙ちゃんには少しずつでも異性として意識して欲しいね‼︎
とってもいい雰囲気よね〜✨健吾はもちろん意識しているけど、あっホントはお付き合いしたい❣️でも理紗子ちゃんはあくまでも偽装だもんね。でもこの水炊きシーンはカップルそのもの💕
お互いに恋愛感情持ってないのかしら?…