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#勧善懲悪
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エリアたちは少し離れた場所で足を止めた。気を利かせたというより、今割って入ったら余計にこじれると分かったからだ。
サペとンドレスは、雨上がり公園の古い柵を挟んで向かい合う。
「待ち伏せか」
サペが言う。
「話が早いだろ」
ンドレスは昔と同じ調子で返した。けれど声の底が硬い。
近くで見ると、幼いころの面影はまだ残っている。けれど目だけが違った。よく眠っていない人の目だと、サペはすぐに気づいた。
「何してる」
サペは聞いた。
「見れば分かるだろ」
「分からないから聞いてる」
「町を動かしてる」
「壊してるの間違いだ」
ンドレスの口元がわずかに動く。
「壊れたまま放っておくよりましだ」
「人の恋も店も、勝手に並べ替えて?」
「綺麗ごとで守れないものがある」
その言葉で、サペの中の何かがぷつりと切れた。
「じゃあ聞くけど、おまえがいなくなった日、誰を守った」
「……」
「祖父さんも、工房も、何も言わずに捨てたのは誰だ」
ンドレスの眉がぴくりと動く。
「捨てた?」
「そうだろ」
「先に置いていったのはそっちだ」
意味が分からず、サペが顔をしかめる。
ンドレスは苦く笑った。
「卒業式の日だよ。分かりやすく、おまえはあいつを追いかけてた」
「あいつって」
「エリアに決まってるだろ」
そこでようやく、言葉の向きが見えた。
サペは息をのむ。ンドレスはまだ、あの日をそこから見ていたのか。
「違う」
「何が」
「いや、違わない部分もあるけど」
「どっちだよ」
「そこを一回も確かめずに消えたの、おまえだろ!」
声が大きくなり、遠くでエリアが顔をしかめるのが見えた。けれど止めには来ない。
ンドレスは柵をつかんだ。
「確かめたら、戻れたみたいに言うな」
「戻れたかもしれない」
「そういう言い方が一番むかつく」
兄弟喧嘩みたいだった。幼いころ、工房の工具箱ひとつで殴り合う寸前までいった時と、同じ顔をしている。
けれど今は子どもじゃない。殴らなくても、言葉で十分痛い。
「次にテオハリへ近づいたら、もっと強い手が出る」
ンドレスが低く言う。
「脅しか」
「忠告だ」
「どっちでも同じだ」
サペが一歩踏み出した時、ンドレスはもう身をひるがえしていた。
去り際、低くひとことだけ残す。
「カレルの件、明日の夜が山だ」
それだけ言って、闇へ消える。
助けたいのか、邪魔したいのか、まるで分からない。
でも一つだけ確かだった。
あいつも、昔のまま平気な顔ではいない。