この作品はいかがでしたか?
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私は個人で絵のモデルをやっている。いつもは絵画教室に行くのだが今回はちょっとふだんとは違う仕事だった。教室ではなく、アウトドアで絵を描く。そのモデルとして雇われて、今日は二日目だ。昨日は遠足中の幼稚園児に見つかって、いろいろ大変だった。今日は何もないといいなぁ。
今日も私はアトリエを出て、画家さんに指示された場所でポーズをとった。それをしばらく見ていた彼だったが、やがて満足したのかスケッチブックに鉛筆を走らせ始める。
「もう少しこっちへ来てもらっていいかな?」
「こうですか?」
言われるままに身体を動かす。
「うん、いいね。解放感があっていい。ここでスケッチをとったら、今度は川の方に行こうか」
「はい」
そうして私たちは川原へと移動しそこでまた同じことを繰り返した。
ところが、河原でスケッチしていると、人の話し声が聞こえてきた。気になってそちらを見ると、中年の男女と、男の子と女の子の4人がいた。家族かな?
「あの……、ここには絵を描く人たちしかいないはずでは……?」
「うん、そのはずだったんだけど、おかしいね」
私は他には誰もいないつもりだったから、服を置いてきちゃった。向こうの子ども達が、裸の私を興味深そうにじろじろ見てきた。私は恥ずかしくて顔を赤くしながら胸や下腹部を隠す。
「まあまあ、そんなに気にしないで。」
「はい……。すみません……」
でも、そうはいかなかった。子ども達がこっちに近づいてきたのだ。
「ねえ、おじさん達誰? 何してるの?」
「ぼくたち今からキャンプするところだから、どこか行ってくれないかなー?」
「そうだよ。邪魔だよ」
無邪気な顔で言う子どもたちだが、言っていることはひどかった。
「おじさんたちは知らないかもしれないけど、ここって私有地なんだよ」
「だから入っちゃダメなんだ」
「ほら、早く出て行けよ!」
二人がかりで追い出そうとしてくるので私は困ってしまった。(続く)
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