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#ヒューマンドラマ
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#大衆食堂
「お浜!!!」
水をかけられた親分はお浜を怒鳴り付けたが、はたと、何かに気がついたようで、がばりと頭を下げた。
「いや、当然だ!俺が間違って、水ぶっかけられようとなんだろうと、うちの野郎達がしでかしたんだ!俺にも、責任はある!」
「まあ、そりゃそうですが、親分、あなたをどうこうして、さて、奥様のお怒りが、とけますかねぇ」
八代が、龍を伴って、玄関へ入って来た。そして、濡れ鼠の親分と、その後ろに控えている例の男達をギロりと睨み付けた。
その迫力は、誰でも、冷や汗が流れるような、冴えたもので、男達は、自然震え上がっている。
「八代の兄貴、さて、どう料理しますかねぇ?」
「おお、そうだなぁ。頭ごと焼いちまうか」
ひやっと、二人組は声をあげて、後ずさるが、そこには、八代と龍が、逃がすものかと待機している。
「八代さんよ!かまわねぇ!やっちまってくれ!」
「おお!親分が、そうゆうなら!お浜!こいつを、台所へ持っていってくれ!」
龍が、大きな、たらいを差し出してきた。
「親分からの詫びと、社長の結婚祝いを兼ねて、尾頭付きの鯛の差し入れだ!!今夜は、豪勢だぞ!」
「おやまあ、それは、それは」
立派な鯛が、二匹入ったたらいを受け取ったお浜は、ふと、櫻子を伺った。
「櫻子ちゃん、鯛の塩焼き、できるかい?っていうか……大丈夫?顔色が悪いよ……」
櫻子は、お浜に返事をすることさえできないほど、怯えていた。あの時のことを、ありありと、思い出していたからだ。
恐怖に囚われ、体も強ばっている。
「そりゃ、そうだ。恐ろしい目にあったんだ!鯛の尾頭付きを、火にかけて、どころか、こいつらを本当に、焼いちまってもいいんじゃねえですかい?八代の兄貴!」
龍の一声に男達は、青ざめた。
「あんたら、悪事を働いて、それで、逃げ切るつもりだったんですか?というよりも、相手が悪かったなぁ。鬼キヨの嫁だからねぇーまずは、一、二発、撃たれることでしょうねぇ」
火で焼かれるというのは、鯛の塩焼きという意味合いだったのかと、少しほっとした矢先き、八代の冗談とは思えない言葉に、男達は緊張した。
鬼キヨなら、やりかねない。どんな目に合うのかと、恐ろしさから腰が抜けたのか、男達は、座り込み、ひたすら手を合わせている。
どうやら口も聞けなくなっている。と、言うより、八代の静かではあるが、凄みを漂わす雰囲気に負けていた。
そして、もう一人、睨みを効かせる者がいる。
「おっ、お玉、どうした、怖ぇ顔をして?」
お玉が、仁王立って、男達を睨みをつけていた。
「どうした?お玉?」
「八っつあん、お玉、ぶたれた!」
言って、お玉は、片方の男を指差した。
「おや、それは、それは、親分、女子供に手を出したのは、これまたまずい」
「そうだよ!!まずい、まずいよ!お玉!!」
お浜が、何故か、お玉を睨みつけていた。
「八っつさんは、あたしの男だよ!あんた、姐さんから、男を横取りするつもりかい!!八っつさんと、呼んでいいのは、あたしだけだよ!わかったね!お玉!」
「あい!!ねぇさん!」
お玉に説教するお浜を、八代は呆れ見ている。
「なんだか、分かりませんけどねぇ、八代の兄貴、どうあれ、こいつらには、それ相当の目にあってもらわねぇとなあ……」
含みを持たせる、龍に、男二人は、ついに、ひやあーー!と、恐怖の声をあげた。
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