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ザザっと波が押し寄せる。そのリズムが変わって、海を見た俺の目に全身が濡れた身体の頭がマグロってヤツにそっくりな何かが、胸から上だけだしていて、バッチリ目が合った。
「マグロ頭の魔獣。まあ、サハギンなんだが……俺としては、恐怖、マグロ男! みたいなタイトルをつけたいところだな」
サハギンは先端が3つに分かれている槍を持って走ってきた。
「うわぁっ! くるよぉっ、気持ち悪い! 何してんの逃げなきゃ! はやくぅぅぅ」
「トマス坊は泣き虫だなぁ。俺っちたちドワーフはあんなのにビビるこたぁねえんだ。まあさがって見ときな」
バルゾイおじさんが立ち上がり、焚き火から一本の太めの木切れを取り出す。どうやら武器のつもりらしい。
ダリルにいちゃんは黙って座ったままだ。
「ダリルにいちゃん、バルゾイおじさんが!」
「まあ、ドワーフのワザをしっかり見とくことだな」
全く心配していない。ワザってなに? ドワーフって鉱夫だったり鍛治職人だったりじゃないのっ⁉︎
「水にまみれた魔獣に火ってのもアタマおかしいかもな。とはいえ問題なかろうて」
バルゾイおじさんと魔獣の距離はもうそんなにない。魔獣は浜辺を歩いている。ダリルにいちゃんくらいの身長だけど全身を青い鱗で覆っていて二足歩行してるけどなんか気持ち悪い。
「既に間合いに入っているが動かないか、2人ともが」
ダリルにいちゃんは解説してくれるのかな?
先に動いたのはバルゾイおじさんだ。
たいまつみたいに持った焚き火の木切れじゃなく普通に拳で殴りにいった。
後ろにさがった魔獣は難なく躱して口から泡を噴き出してバルゾイおじさんに当てる。
バルゾイおじさんは濡れたけど何の意味があるんだろう。
「泡。それがただの水とは限らない。何かしら攻撃として成立するものだろうな」
泡が弾けてバルゾイおじさんはその場に膝をついてえずきはじめた。
まさか、あの中には毒が入っていたとか⁉︎
「だからほどほどにしておけと言っていたのに」
バルゾイおじさんはとうとうゲロを吐き出して苦しそうにしている。
「た、助けないとっ!」
なんでダリルにいちゃんは助けないんだ、あんなに苦しんでるのに。
「……あれはただの飲み過ぎだ。飲んでいきなり動いたから戻したみたいだな」