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電車に乗りながら、元夫と元義母、不倫相手の理不尽な仕打ちとも言える出来事に、八方塞がりになった恵菜。
涙ぐみそうになるのを堪え、自分は調子のいい女だ、と思いつつ、純にメッセージを送った。
「谷岡さんに……あんな態度を取ってしまったのに…………迷惑を掛けてしまって…………本当に……ごめん……なさ……い……」
「大丈夫。俺は…………大丈夫だから……」
「こんなみっともない話を…………聞かせてしまって…………すみま……せ……ん…………」
「恵菜さん…………俺は……本当に大丈夫だから……」
(彼女が受けた言動を思うと…………俺まで悔しい……。俺が少しでも話を聞いてやる事で……彼女の心が癒されるのなら…………)
さめざめと泣き続ける恵菜に、純は湧き上がる憤怒を抑え込みつつ、彼女を見守る事しかできなかった。
***
彼女は、まだ静かに涙を零している。
「…………離婚して半年以上経つのに…………何で……」
四阿の二人を沈黙が覆い被さる中、恵菜の心根に澱んでいる思いが、堰(せき)を切って溢れ始めた。
「勇人と復縁して欲しいとか…………勇人センパイと……もう会わないで……とか…………勇人が私の家の前で待ち伏せしてるとか……」
次第に顔を伏せ始めた恵菜の表情から、雫が滴り落ちると、膝の上で微かに震えている握り拳の上に落ちていく。
「離婚したのは全て私が悪い…………とか……私さえいなければ…………とか……存在すら否定されてっ……!」
恵菜の表情が、悔しさとやるせなさを滲ませ、華奢な肩が小刻みに震え始めた。
「全てを……リセットしたはずなのに…………あの人たちは…………私の気持ちを…………蔑ろにして……! あの人たちに…………自分勝手な事ばっかり……言われ続けて!」
止まらない涙が、これ以上溢れないように、彼女は勢い良く天を見やる。
「私が…………わた……し……が…………あんたたちに…………何をしたって……いうの!?」
まるで鮮血を吐き出すような、恵菜の悲痛な叫び。
彼が、苦悶に満ちた表情に変わった瞬間。
「…………っ……!」
儚げで消えてしまいそうな恵菜の小さな身体を、純は堪らず引き寄せ、強く抱きしめた。