「俺は特別だった」
俺の名前はレイ・スモーク。
物心ついた頃から、俺は“特別”だった――そう、少なくとも周りはそう言っていた。
「見て、うちのレイは村で一番に魔法を使えたのよ!」
母さんは村の広場で、誇らしげに叫んでいた。
「すごいな、レイ!ほんとに小さな手なのに、もう魔法が使えるんだな!」
村の大人たちも笑顔で俺を褒めてくれた。
だが、俺ができたのは――
「ほら、また手から黒い煙が……」
子供たちが珍しそうに俺の手を見る。
「うわぁ……黒煙だけ?炎とか雷は?」
俺は黙って首を振るだけだった。
時が経つにつれて周りの子供は、次々と煌びやかな魔法を使えるようになっていった。
「レイ……まだ黒煙だけ?」
「……うん。」
「やっぱりすごい魔法ってわけじゃなかったんだね。」
次第に彼らの声には失望と呆れが混じりはじめた。
「お前にはガッカリだよ、レイ。」
父さんですら、ため息交じりにそれだけ呟いた。
それでも俺は、あきらめきれなかった。
「冒険者になりたい……!絶対、諦めないんだ!」
魔術師の養成所に行き、必死に練習を積んでも——
「また煙だけじゃないか!」
教官はイライラした顔で俺を見下す。
それでも必死に頼み込んだ。
「お願いです、僕を冒険者登録してください!絶対に役立ってみせます!」
幾度となく願い、頭を下げ、ついに——
「はぁ……仕方ない。気まぐれで一人くらいいてもいいだろう。登録してやるよ。」
やっとの思いで、冒険者になれた。それから数年の時が流れて――
「俺も……やっと、パーティに参加して冒険者として活躍できる日がきた……のか?」
今や二十歳になった俺。だけど、現実は……
俺はパーティの隅っこで、今日も手から黒煙を漏らしていた。