むかしむかし。
とある世界のとある星では、ニンゲンとマモノがいつもケンカをしていました。
ずっとずっと仲が悪く、ケンカばかりしていましたが、ある日マモノ達の中に一体の王様が現れました。
カレはとてもつよく、とてもかしこく、うつくしかったので、マモノ達はみな『マオウサマ』と呼んだそうです。
マオウサマはつよかったので、マモノ達はたくさん勝ちました。
ニンゲン達は負け、星のすみっこでしか生きていけなくなりました。
『このままではニンゲンはゼツメツする』
みんながそう考えていましたが、マオウサマがトツゼン死に、王様がいなくなったマモノはゆっくりとジメツしていったのです。
ナゼかはわかりませんでしたが、そのジジツをニンゲン達はスナオによろこびました。
でも、このままではニンゲンもみんな居なくなってしまうでしょう。
多くのモノ達がそう考えてしまうくらい、ニンゲンも減っていましたから。
だけどニンゲン達はふえていきました。
そして、ニンゲン達は住むばしょを広げました。
いつかはマモノに勝とうと、こっそりがんばっていたおかげで。
——知りたいかな?
どんなふうにがんばったのか。
どうしてまた、ふえたのか。
知りたいなら、この本の上にキミの手をのせてみるといいよ。
今をかえたいキミも、手をのせてみるといいよ。
キミを、わたし達がたすけてあげる。
——生まれて初めて、母さんから渡された絵本に書いてあったこのお話は、とても不思議な終わり方をしていた。
真っ黒なクレヨンで描かれた“マモノ”。赤や青といった綺麗な色を使って描かれている“ニンゲン”達。豊かな自然の風景もクレヨンで描いているのにとても綺麗で、心を惹き込む力強さがあった。
正直な所、お話の意味はよくわからなかった。
だから面白いとも思わなかった。だけどワタシは何の気なしに手を置いてみた。
今日初めて会った弟の、小さな小さな手も、一緒に。
最後に書いてあった、『キミを、わたし達がたすけてあげる』という文字が胸にじわりと響いたからだ。
たすけて、たすけて、たすけて…… もう、ここから消えてしまいたい。
そんなお願いが叶うかもしれないと、少しだけ、本当に少しだけだったけど、期待したからだった。