テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
1,325
リフォームを初めて早1ヶ月。今日でリフォームも終わりを迎える。
「暑い中お疲れ様です。これ良かったら…」
「あぁありがとうございます!」
工事の人達に缶コーヒーを渡して仕事に向かう。鍵を預けてあるから、私が仕事から帰る時にはあの人たちは作業を終えて鍵も返却されるだろう。
私は近くの中学校のスクールカウンセラーとして働き始めた。と言っても臨時採用という形で、フリークスクールの運営が安定し始めたら辞める予定だ。
「おはようございます」
「おはよぉ。しおりちゃん今日はね、久しぶりに学校に来てくれる子がいるんだよ」
「そうなんですか」
専属のスクールカウンセラーの明美さんの話を聞きながら身支度をする。
「澤田楓ちゃんっていう子。会ったことある?」
「ない、ですね。見知らぬ人なので私は会わない方がいいですよね」
私の言葉に明美さんは目を丸くした。
「そんなことないわよ!公認心理師のしおりさんがいるなら親御さんも安心するだろうし」
「そうですかねえ」
臨床心理士である明美さんにとって私はすごいらしい。
臨床心理士と公認心理師の違いは資格にある。私の持っている資格は国家資格で、明美さんは民間資格だ。そこには雲泥の差があると感じている人もいれば、感じていない人もいる。
ちなみに私は感じていない。心理職は経験値がものをいうと思っているからだ。
「相変わらずあなたは踏み込まないわね」
「え?」
意味が読み取れない言葉に反応する。そして、警戒した。
「先生たちは、なんで来なくなったのとか外に出られてるのかとか聞くのに。あなたはいつも何も聞かないわ」
明美さんの言葉を聞いて、少し思い当たるところがあった。
「話を聞く時、土足で上がったら失礼ですから」
「そうね。そうかもしれないわね」
それっきりで、朝の会話が終わる。
私と明美さんはいつも一緒に行動している訳ではなく、校舎内を見回りしたり、保健室に顔を出したりとそれぞれで動くことがほとんどだ。明美さんは午前中で帰るが、私は不登校の子の家に訪問したり、保健室登校の子とお話する。一日中仕事をさせてもらっているのだ。
「そういえばフリースクールの進捗はどう?」
いつもと違う会話の流れが来て反応が遅れる。
「今日でリフォームが終わるんです。あとは家具とか本とか、必要なものを揃えていざスタートです」
「いよいよなのね。予算は間に合ってる?」
「ある程度は残すことが出来ました。ただ、リフォームに多くかけちゃって…これからはDIYとかもしたいなぁって」
なるほどねぇ、と言いながら腕を組む明美さん。
「あ、じゃあ私の実家にある家具あげようか」
「えぇっ?そんな、悪いですよ」
迷惑になりますし…といいながら慌てて遠慮する。しかし明美さんは乗り気のようだ。
「いいのよ〜。処分に困っていたところだし。逆に汚くて申し訳ないけど」
「えっと…」
どう返事をしようか迷っていると、明美さんは続けて説得した。
「うちの旦那がトラックで運ぶし、息子たちも運ぶの手伝うから!ね?」
明美さんの優しさに心が温まる。こういう時、人との繋がりに深く感動するのだ。
「じゃあ…ありがとうございます」
人々の助けがあって私は成長する
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!