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ありんす
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ねこなさま🐈⬛💘
7
す㍄
9
俺はジャガーの元へと向かい、調理器具の作成を頼む。
「なぁジャガー鉄板にくぼみ作って、米つめる成型器作ってくんないか? サイズはこれくらい」
俺は握ったシャリのサンプルを見せる。
「これを一気に10個くらい作りたい」
「こんなちっちぇ穴いっぱい作るのか?」
「おう、シャリ製造マシンだ。大体一個あたり17~20グラムくらい、米数は約400粒程度」
「意外とこまけぇな」
「すぐできる?」
「電動で動かすわけでもねぇなら、こんなもん30分でできるわ」
よし、その間に酢飯の準備をしよう。
1時間後――
ソニアは板前と書かれた調理用白衣を着て、酢飯の入った桶の前に立っていた。
洋風キッチンに板前衣装というのは、かなり浮いているが、これが寿司を作る正装である。
「わ~お姉様、これから何を作るんですか?」
テーブルに行儀よく座ったロゼが、目を輝かせてキッチンを見やる。
その期待の目に反して、ソニアは目を泳がせる。
「はは、私も何作るか知らないんだ……」
「またまた~出来上がるまで内緒ってことですか♪」
ソニアは笑顔だが、冷や汗をかいている。
彼女は肘で、助手役の俺を突く。
「おい、私はこれからどうしたらいいんだ?」
「この鉄板のくぼみに、桶の米をつめろ。そしてその上に、ママ上が切った切り身を乗せるんだ」
「ふむ」
ソニアはシャリ成形器に米をつめつめして、シャリを作った後、ママ上と俺が切った魚の切り身を乗せていく。
タイやヒラメ、ドスマグロカツオにホタテと鮮やかなネタが並ぶ。
「こうやって丁寧に乗せるだけだ」
「なんて簡単な……。これはオリジナリティが爆発しそうだ」
「お前の場合、本当に爆発させそうだからやめろ」
ソニアは一貫一貫丁寧に寿司を作り上げ、持ち前の美的センスで綺麗に下駄の上に並べていく。
「ほ、本当にこの料理は美味いのか?」
「大丈夫だ、安心して持っていけ」
色とりどりの30貫ほどの寿司を、ロゼの待つテーブルへと運ぶ。
「うわぁ……すごい……お姉様、これは」
「寿司というオリエンタルな料理だ。新鮮なネタを酢飯でいただく」
「寿司……」
「そっちにある黒い汁をつけて食べるんだ」
醤油な。俺が料理スキルを上げるときに、試行錯誤して作り出したオリジナル醤油である。厳密に言うと錬金釜や、複数のゲーム内調味料を混ぜ合わせて、醤油の味を再現した醤油もどきである。
ロゼは透き通るような白身魚の寿司を手にもつと、醤油を少しつけて口の中に頬張る。
「美味しい……」
どれどれと、ジャガーがひょいっとドスマグロガツオのトロ寿司を口の中に放り込む。
「……んっ良いなこれ! 魚の脂身がすげぇや! レモンがちょっと入っててさっぱりしてるのもいいな」
「僕も食べよ~。ん~サザエ寿司、コリコリして美味しい!」
「赤身も、もっと血なまぐさいかと思ってましたけど、全然だ……。さすがお姉様」
「そ、そうだろう?」
「板前、こちらを」
俺は殺し屋リスの生肉スライスが乗った寿司を、ソニアの前に出す。
「こちら炙ってもらって(火力に注意するんだぞ。焦がすなよ)」
アイコンタクトで注意事項を伝えると、彼女は頷いてパチンと指を弾く。
するとボンっと派手な炎が寿司の上であがり、殺し屋リスのステーキ寿司が完成。
「ワサビと塩でどうぞ」
「こりゃワイルドでうめぇよ。肉油と酢飯がマッチしてる」
「カシラ、やっぱ海賊は肉食わないと」
「むぐむぐ、んまーい!」
ヨハンナとビアン&ポニーは、ステーキ寿司を貪り食っていく。
珍しい料理のおかげで、ロゼへの面目もたっただろう。
そう思っていた時、不意にロゼから質問が投げられる。
「お姉様、この料理は一体誰に教わったのですか? こんな料理は、間違いなくトリスタンのものではないですよね?」
「あ、あぁ、えぇっと、リガルドの料理をラウル王子から学んだのだ」
そう言うと、ロゼは目をパチクリとさせる。
「お、お姉様、その……それはリガルドに嫁入りするということですか?」
「「「ボフッ」」」
隣で寿司食っていた、ジャガー、ヨハンナ、ナハトが同時に吹き出す。
「だ、だってなかなかトリスタンに帰ってきませんし、リガルドの料理を学んでいるということはつまり……」
「い、いや、誤解だ! その……」
ソニアは、視線を右に左にと泳がせた後、小さく息をついて白状する。
「すまないロゼリア、私は料理がヘタなのだ。今回ラウル王子が、初心者でもできる調理器具と、乗せるだけですむネタを用意してくれたのだ」
「えっ、それでは今まであたしが食べていた、お姉様の料理というのは」
「トリスタンのシェフやメイドが作ったものだ……。今まで嘘をついていてすまない」
ソニアは板前帽子を脱いで、頭を下げる。
「まぁそのなんだ、お姉さんにもプライドってものがあってだな」
なんとか俺がフォローしようとするも、ロゼはクスクスと笑みを浮かべる。
「そうだったんだ。良かった、お姉様に不得意なものがあって」
彼女はお姉様が完璧超人じゃなくて良かったですと、料理下手なことを喜んだ。
「よく見ると、お姉様指ケガしてますよね」
「あ、あぁこれは包丁がうまくいかなくてな」
「剣はあんなに得意なのに、包丁はダメなんですね」
「敵を刺したり斬ったりするのは得意なんだがな」
「……あの、お姉様が握ったお寿司、食べてみたいです」
そう言われ、ソニアは桶の酢飯を手に取ると不器用に握る。
米はボロボロで、なんとか形を保っているだけのシャリの上に、分厚く切ったドスカジキガツオの身を乗せる。
「これが私の実力だ」
ロゼは大きな寿司を、一口で食べて見せる。
「ん…………。美味しいですお姉様のお料理。あたしはこちらの方が好みです」
「……ありがとう」
「ソニア、ここはお粗末様ってかえすんだぞ」
俺がアドバイスすると、彼女は板前の風格を出しながら「お粗末様」と妹に言う。
◇
食事を終え皆が食堂から出た後、ソニアは一人、残った酢飯を握っていた。
「あれ、まだやってるのか?」
「あまりにも不甲斐ないデキだったからな。さすがにこの寿司というものは、私でもできそうだ」
「甘いな、寿司は職人の元で20年弟子入りしないと板前にはなれないんだぞ」
「そうなのか? 厳しい世界だな」
彼女が握ったシャリを見ると、どれも強く握りすぎて米が潰れてしまっている。
「あーちょっと待て、力が強い」
「そんなに力入れてないぞ?」
「いや、もう腕に力が入ってる」
俺は後ろから彼女の手を取り、力を入れないように補助する。
彼女の白く細い手を、むちむちのクリームパンみたいな手が包む。
「こう、もっと優しくふわっと。ぎゅっと握るのはおにぎりだから」
「…………」
「どうかしたか?」
「いや……そんな後ろから密着されて手を握られると……私でも照れる」
珍しく赤面して、視線をそらすソニア。
そういう意識させること言うのやめてくれるか?
お前はもっとふんぞりかえって、我が美貌を見よって高笑いするキャラだろ。
「トリスタンにはその……嫁入りする時、相手の家庭の料理を勉強するという文化がある。恐らくロゼリアは、そのことを言っていただけだと思うから」
「ぜ、全然俺も気にしてないから」
なんだかお互い浮ついたままシャリが完成。ソニアは不器用に切った白身を上に乗せる。
「食べてくれ」
「俺でいいのか?」
「ああ、自分で食べてしまっては正当な評価を下せないからな」
俺は彼女の握った寿司を口に入れる。正直手の熱がシャリに移っていて、100点とは言えないまでも、合格点は与えられる味だ。
「美味いよ」
「ほ、本当か?」
「ああ、嘘ついてないって」
「そうか……自分の作ったものを褒められるというのは、悪くないな」
彼女は少し火照ってしまったと手で自分を扇ぎながら、調理白衣の胸元もパタパタとする。
白い胸元が見えて、ついガン見してしまう。
その視線に気づいて、慌てて胸元をおさえるソニア。
「こ、こら、やめないか」
「なんでや、この前の戦闘訓練では、私の体が見られてラッキーだろうワハハって言ってただろ」
「それとこれとは別だ!」
ソニアは、慌てて厨房から立ち去っていく。
なにこの緩いラブコメ感。
すると背後からゴッと何か音が鳴った。
振り返ると、ロゼが白い目で俺を見ていた。
「今、お姉様に粉かけてました?」
「かけとらんわ」
めんどくさい姉妹だな。
完璧なるソニア 了
コメント
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「完璧なるソニア」というタイトルが、この回で本当に効いてきましたね。料理下手で不器用な一面を認めるソニアが、妹のロゼに「お姉様に不得意なものがあって良かった」と言われるシーン、じんわりきました。あの完璧超人キャラの隙が愛おしい。シャリの握り方のラブコメ展開もいい塩梅で、ロゼの最後の白い目が最高のオチでした。寿司という文化の再現も含めて、世界観を広げる上手いエピソードだったと思います。