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リガルド帝国――西部モンドレイク
広大な草原と、渓谷に囲まれた田舎街。普段は赤レンガの並ぶ家と、家畜の世話をする農夫たちが多く暮らす。
ジャガー、ソニア、セレーネは荒れ果てたというより、消し炭にされた街を見て顔をしかめる。
「大怪獣が暴れたようにしか見えねぇな……」
ジャガーは、まともに建っている建物がなくなってしまった、元モンドレイクの街を見て顔を引き攣らせる。
「あながち間違いではないな」
ソニアは膝を折って、地面に残された焼け跡を確認する。
建物の柱すら残らない、強力な炎の攻撃。恐らく一瞬の出来事だっただろう。
「リガルド兵たちの報告によると、突如として黒色のドラゴンが現れ街を焼き払ったと」
セレーネは転がった片方だけの靴を見て、痛ましい表情を浮かべる。
本日彼らが呼び出されたのは、リガルド主催による緊急の会議である。
議題は当然、モンドレイク消滅のことについてだ。
王の代理として、彼らはこの議会に出席することとなった。
ジャガー、ソニア、セレーネは、モンドレイク近くにある会館へと移動。
用意された円卓に腰を下ろすと、全員の視線は、ガレス共和国のグローリーへと向く。タランチュラの住処となっており、4国とは決別したと言っても良い国だ。
ジャガーたちの緊張感とは別に、彼はさわやかイケメンの表情で、お付きの少女と乳繰り合っている。
「もぉグローリーったら、やめてよこんなとこで~」
グローリーと同年代のピンク髪の可愛らしい少女で、後頭部の大きなリボンとキュロットパンツが目を引く。
一応騎士としてこの場にいるようだが、どうにも腕っぷしが立つようには見えず、シンプルにグローリーが女を連れてきたようにしか見えない。
「いやいや、おれは別になにもしてないって」
「絶対お尻触ったって~♡」
「触ってないって~の♪」
「チッ」
ジャガーから思わず大きな舌打ちが漏れた。それはソニアも同じで、モンドレイクの惨状を見て、なぜこれだけ脳天気にいられるのかと怒りたくもなってくる。
「なんだか平和そうですね」
ソニアの隣に座るセレーネが、バカップルを見るような目でグローリー達を見やる。
「敵国の街が一つ消えたのだ。彼らにとっては祝杯でも上げたい気分なのだろう」
「嫌ですね、こういう露骨なの」
ソニアとセレーネが小さな声で話し合っていると、扉が開き主催国であるリガルドの王子が姿を現す。
ジャガー、ソニア、セレーネ、全員が、あの肥満王子が登場すると思って待っていたが、現れたのは黒髪で聖騎士のような格好をした少年。
装飾過多の金属鎧に赤のマントをなびかせた、目つきの悪い王子は、集まった4カ国の代表を見てフンと鼻を鳴らす。
(あちゃ~第2の方か……)
(今日の会議はきついぞ)
ジャガーとソニアは、ダメだ話の通じないほうが出てきたと顔をしかめる。
イヤミルの隣に付き従うのが金髪ロングの騎士リリア。ヘソの露出したセパレートタイプの鎧に、丈の短いスカート。眼光はイヤミルよりも鋭い。
凛々しい騎士を引き連れ、リガルドの王子はどかっと円卓に座ると、威圧的な目で全員を見やる。
独特な緊張感が走る中、イヤミルは特に貫禄もない咳払いをして話を始める。
「ウォッホン、今日集まってもらったのは他でもない。我がリガルドの領土、モンドレイクが何者かによって焼き払われた。これは明らかなる帝国への挑発であり、戦争行為に等しい!」
イヤミルは怒りを爆発させ、円卓を強く叩く。
「この事件を受け、我が帝国は直ちに調査を開始する。ギデオン、トリスタン、アクアレム、ガレスの各国……我々はお前たちを疑っている!」
椅子の上で、行儀悪くあぐらをかくジャガーは顔をしかめる。
「おいおい、オレ達がやったっていうのか? 目撃者によると巨大な竜が飛んで来て、焼き払ったって話だろ?」
「巨大な竜が来たのならば、大きな痕跡が残るはずだ。しかし火炎による攻撃跡以外残されておらず、竜がどこに行ったのかもわからない。つまりこれは、竜の仕業に見せかけた他国からの攻撃」
「は? どうやってだよ」
「ギデオンならば、機械翼竜を使って爆撃したのだろう! トリスタンは、きっと魔法でドラゴンを召喚したに違いない! アクアレムは海王生物を引き連れてきたんだろ!」
「機械翼竜て……」
「巨大ドラゴンの召喚……どれだけ膨大な魔力がいると思ってるんだ」
「海王生物を、この陸地まで連れてくるのは無理が……」
イヤミルの妄想に近い言いがかりに、各国の代表は呆れを通り越してため息を付く。
「犯人がどこの者かを問わず、見つけ次第必ず報復する! モンドレイクは、帝国に忠誠を誓った街であり、それを滅ぼした報いを受けるのは当然のこと! 帝国は決して、やられたままでは終わらない!」
盛り上がるイヤミルを前に、ジャガー達はめんどくせぇ奴に火がついてるわ、と顔をしかめる。
三人は内心で(あーあラウルだったらなー)と深い溜め息をつく。
「おい、こんだけ言われると癪だから言い返すが、リガルドが自作自演したって可能性もあるぜ」
「我々に罪を着せて、侵略の口実にする。昔から大国がよくやる手口だな」
ジャガーとソニアに言われて、顔を真赤にしてテーブルを叩くイヤミル。
「ふざけるな! 我が帝国は、そんなことをしなくても貴様らを捻り潰すことくらいできる! 最後の忠告をしよう。潔白を証明したいのであれば、今すぐ帝国に協力せよ! それができぬというのなら、お前たちが犯人だと見なす!」
3時間後――
ほぼほぼイヤミルしか喋っていない会議を終え、議場を出たジャガー、ソニア、セレーネは軽くグロッキーになっていた。
「すげぇ疲れた……6時間の会議3セットやったくらい疲れたぜ」
「最近話が通じる方の王子と会話してたから忘れていたが、リガルドの本質はあっちだからな」
「ラウル王子が言ってらっしゃいました。イヤミル王子は、未だ実績がなくて成人できないらしく、”かなり兄上はかかっている”と」
「かかるとはなんだ?」
ソニアの問に、ジャガーは「張り切りすぎて滑ってるってことだ」と教える。
「なるほどな。確かにダークラインでは部隊を指揮して戦い」
「アクアレムではクーデターを阻止。リガルドに対して海産資源の輸出を再開しましたし、ラウル王子の帝国内での評価は高まっているでしょう」
「ポンコツだと思ってた第三王子に、水あけられまくって焦ってるってわけか」
「して、どうする? 無能のイヤミルと、リガルドを焼いた竜とは別問題だぞ。このモンドレイクは、各国の国境近くだ。ふらっとその竜が、私達の国に現れてもおかしくない」
ソニアの問に、ジャガーは腕組みして考える。
「イヤミルの話を信じるわけじゃねーけど、本当に竜の仕業か? 近年で活動的な巨大竜なんか聞いたことねぇ。タランチュラの連中の可能性はないか?」
「今までこそこそ活動していた彼らが、急に街を一つ焼く派手な破壊活動を行うでしょうか?」
「正しく毒蜘蛛みたいにコソコソ行動する奴らだしな」
三人は一旦各自の国へと戻り、防衛策を講じる事となった。
#シクフォニ
らの(腐女子)
249
5,423
#悪役
にこ
8,545
コメント
1件
うわ、イヤミル王子めちゃくちゃ面倒くさいやつですね……(苦笑)。会議シーン、各国代表の「あーあ」感がひしひし伝わってきて、読んでるこっちまで疲れました。でもそれだけキャラの立ち方がしっかりしてるってことですね。ラウル王子だったらなあ、と三人が思う気持ち、すごくわかります。次回、この火種がどう燃え広がるのか気になります。