「奈美は俺と会う時、ワンピースやスカートを穿いている時が多いよな。そうだ、どうせ買うなら電波ソーラーの腕時計がいいな。時刻が正確だし、毎日文字盤に部屋の明かりを当てておけば、電池切れの心配もないだろうし、何しろ長く使える……」
豪が奈美の服装を見ながら、店員に声を掛けて、レディースの電波ソーラー機能付きの腕時計を、全てショーケースから出してもらっていた。
全部で十数点ほどある。
「何か豪さん、腕時計に詳しい感じ……」
「そんなに詳しくないと思うけど、腕時計は結構好きだな……」
彼女が彼の左手首をチラ見すると、恐らく海外メーカーと思われる、お高級なクロノグラフの腕時計をしている。
「で、奈美が気に入った腕時計はあったのか?」
「これがいい……です」
奈美は、出してもらった中から、気に入った腕時計を指差した。
フェイスが小さめ、ネイビーブルーに文字がシルバーの文字盤の腕時計。
偶数のみローマ数字で書かれてあり、奇数部分はジルコニアが埋め込まれ、三時の部分はカレンダーになっている。
本体とベルトがステンレス製の、シンプルな腕時計が可愛いと思った。
そして価格も一番安い。
安いけど、ネイビーブルーにしては鮮やかな色合いが、すごく綺麗で気に入ってしまったのだ。
「よし、決まりだな」
彼がいつの間にか会計を済ませ、腕時計の入ったショップ袋を奈美に手渡してくれた。
ギフト包装までしてくれて嬉しい。
豪は、気になった腕時計があったのか、ショップの中にあったパンフレットを一冊手に取り、パラパラ捲った後、雑貨屋のショップ袋にしまい込んだ。
お店を出た後、彼にお礼を伝える。
「豪さん、今日は何から何まで……色々とありがとうございます」
「どういたしまして」
豪の唇が緩やかに弧を描いた後に、白い歯が微かに覗く。
奈美の頭を数回撫でた後、手を繋いでモールを後にした。
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