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デビュタント当日。
私は朝早くから準備を始め、夕方、やっとそれが終わった。
今日、私は初めて肩だしのドレスを着た。スースーするからなんだか慣れない。
このドレスは全体的に淡い撫子色で、ところどころに花が散りばめられている。いつも華やかなドレスを着ているが、このドレスもまたいつも以上にリボンやレースやフリルがたっぷりと使われている、かわいいドレスだ。
いつも纏めている髪の毛は背中に流し、片方のこめかみ辺りの髪の毛だけ編み込みした。それを、彼に貰ったあのリボンで結んだ。いつも私の髪の毛を結わえてくれるリエルだが、今日は特別な日だからといつも以上に丁寧に仕上げてくれたようだ。全く頭が上がらない。
そして今、私は会場である王城にて、彼と入っていた。
今日の彼は、私が渡したクロスタイに、黒いロングコートを羽織り、青い宝石が埋め込まれた銀色のラペルピンを留め、黒い手袋をはめていた。
比較的シンプルな服装であるのに全くそう感じないのは、彼が美しいからだろう。
そして、さりげなく私が渡したクロスタイを使ってくれているのも嬉しい。
今日も今日とてかっこいい彼である。今日はいつも以上にかっこいい。いつもかっこいいけれど。
私は彼と城内に入りながら、ああそういえば、と隣を歩いている彼に話しかける。
「瞳の色は大丈夫なのですか?」
そう、彼の瞳は深海色、すなわち紺色だ。
青い瞳は周りから忌み嫌われると彼に幼い頃に教えてもらったが……。
彼は私の言葉に頷く。
「ああ、大丈夫だ。実は、お前以外には違う色に見える魔法をかけている」
「そうなのですか?」
へぇ。そんな魔法があるんだな……。
「ああ。昔はこの魔法が使えなかったから、外套でどうにかするしかなかったが」
「そう…ですか……」
彼はどれだけ苦労したことだろう。
瞳が青いだけなのに、忌み嫌われるなんて。
とても綺麗な色なのに。
すると、私の思っていることが顔に出ていたのか、彼は私を気遣うように言う。
「そんな顔をするな。もう今は大丈夫だから」
「はい……」
私の気持ちは晴れないが、私は彼に笑顔を向けた。うまく作れていた自信はないけれど。
私たちはいつの間にか会場の真ん中あたりに着いていたらしい。
と、彼が私の腰を引き寄せ、彼と向かい合う形になる。
……びっくりした。心臓が跳ね上がった。
「ほら、曲が始まるぞ」
すると、本当に曲が始まり、周りの人たちも踊り出す。
私たちもワルツを踊り出した。
実は、この日のために講師を呼んで一ヶ月間ワルツの練習をしていたのだ。
大丈夫だ。手順はすべて頭に入っているし、相手の足を踏まないように練習してきた。
だから失敗しないはず……。
と、私はあることに気づく。
「ルウィルク様、リードお上手ですね」
そう、彼のリードがとても上手なのだ。
彼は口を開く。
「そうか?昔父に教えてもらったことがあるからだろうか」
「お父様に?」
「ああ。万が一の任務のためにと教え込まれてな」
「なるほど」
私は一つ頷いた。
と、曲が終わる。
私は彼の足を無事踏まなかったことに安堵していると、私の身体がふらりとなった。
すると彼は、私の身体を抱き留めてくれる。
「疲れたな。少し休憩するか」
「は、はい。ごめんなさい」
私は赤くなってしまい、彼の胸から慌てて離れる。
そして私たちは会場を後にした。