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「圭、今でこそハヤマのDTM事業部の課長だけど、彼、それまでは副社長だったのよ」
「っ!」
美花は、ハッとして息を詰まらせる。
圭本人から、ハヤマの社長の息子、とは聞いていたけど、まさか副社長だったとは知らなかった。
立川駅すぐ近くのマンションに住んでいる事や、ハイクラスブランドジュエリーの店に美花を連れて行ってくれた事を思い返すと、彼女の中にあった点のような疑問が、一本の線となり、繋がっていく。
「それに、圭は眉目秀麗で高学歴の持ち主でしょ? 周りの女たちは放っておかないわ。彼、婚約者がいても、他の女と平気で浮気をするような男よ?」
「…………こ……婚約……」
「そうよ。圭の浮気が婚約者に知られて、婚約破棄になった。ハヤマの社長に女性問題を知られて、副社長からDTM事業部の課長に降格した男なのよ」
千夏が遠い目をしながら、小さくため息をつく。
高学歴……元副社長……婚約者……浮気…………婚約破棄……女性問題……降格……。
美花の脳裏に駆け巡る言葉が、次第に大きな渦となっていき、今まで圭から聞かされてこなかった事を第三者から知らされ、声を出せずにいた。
千夏の放った言葉が、嘘だと思いたい。
けれど、威圧感の中にある妙な説得力のある言い草に、嘘ではないと、美花は確信してしまった。
「それに、圭は腹黒い男よ。圭があなたに、自分の都合の悪い事を言えなかったのは、もしかしたら、『遊び相手が、また一人減ってしまう』のを恐れたのかもね。彼、女にチヤホヤされる事で、自分の承認欲求を満たしていたし……」
千夏が美花に冷たい視線を向けると、フフッと不気味な笑みを覗かせた。
「だからあなたに言わせてもらうわ。圭とこれから会うのなら、今日で最後にして。今後、彼と連絡を取るのも会うのも、やめてくれないかしら?」
「…………ど……どういう事…………です……か……?」
理不尽な言葉を投げられた美花は、顔を歪めながら、おずおずと千夏と目を合わせる。
「分からない? 圭は、あなたの手に負えない男だって事よ」
彼女を品定めしながら馬鹿にしていた千夏が、怒気を孕ませた低い声音で、美花に詰め寄る。
「それは…………できませんっ……」
「諦めの悪い女ね……」
美花は怯みながらも、何とか歯向かうと、千夏は真っ赤な唇を歪めさせながら吐き捨てる。
「私、あなたの事を調べさせてもらったけど」
千夏が一歩前に踏み出し、不敵な表情を浮かべながら下衆な笑みを湛えさせた。
恵