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奈美のIDを消去された豪は、すぐに自宅へ戻った。


頼みの綱は、あのエロ系SNSだ。


ここだったら、彼女と連絡が取れるかもしれない。


スマホを取り出し、エロ系SNSのトップページにアクセスする。


約四ヶ月振りに開き、ログインすると、変わらず毒々しいカラーリングのサイトに、目の奥が痛くなってきた。


豪は、DM欄を開いてみると、送信者の名前に『奈美』とあったのが、『このユーザーは退会されました』と表示されている。


「マジかよ……」


彼は前髪を握り、くしゃくしゃにさせた。


ひとしきり頭を抱え、途方に暮れながら顔を歪めさせた後、親友、谷岡純のスマホ番号を表示させた。


ヤツは奈美の上司、夏季休暇中だろう。

もしかしたら女とデート中かもしれないが、そんな事は構わず、豪は通話ボタンをタップした。




『何だよ、女かと思ったら豪かよ』


呼び出し音が五回鳴った後、純が怠そうな声で電話に出る。


「期待外れで悪かったな。それよりお前、明日暇か?」


『夕方以降だったら空いてるけど、何かあったのか?』


「明日、久々に地元で飲まね?」


『お前が俺に飲みの誘いって事は、高村さん絡みだろ』


「うるせぇな。とにかく、明日十八時に、吉祥寺駅の公園口改札前で待ち合わせでいいな?」


『了解。色々話を聞けるのを楽しみにしてるぜ』


画面の向こう側で、純がニィッと笑ったような気がした。


(だが、実際の出来事は、どん底に突き落とされた気分なんだよな……)


通話終了のアイコンをタップして、ソファーにスマホを放る。


豪と奈美の唯一の繋がりは、彼女の上司でもあり、豪の親友でもある純だ。


ヤツには借りを作るようで癪だが、これまでの出来事を正直に話すしかない。


もちろん、エロ系SNSで知り合い、クンニだけの関係を持っていた事は、純には絶対に知られてはならないが。


ヤツの中では、豪と奈美は合コンで出会い、豪が一目惚れしたという事になっている。


あんなSNSで知り合った二人だが、このまま終わらせない、絶対に。


スマホの画像フォルダ内をタップして、奈美の画像を見つめる。


「奈美……」


癒される笑顔の画像を見ながら、彼は、いつしかソファーの上で眠りに堕ちていた。

ただ、それだけの関係……

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