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「お呼び頂き誠にありがとうございます。イヴィル様……お久しぶりでございます」
目の前にいるモリアは困った顔をしている。
ここはヴィルサレム公爵家の修練場。
俺がA級ダンジョンから『破滅の杖』を獲得してから、ちょうど2週間が経過していた。
1匹だけだがオークを倒してもらった時のモリアの剣捌きを見て、折角であればとモリアに師事を頼んだ。
使える手札が多ければ、対処できる問題も多くなる。
そう思ってお父様を介して依頼をかけた。
ただ、お父様は一瞬だけ嫌そうな顔をしていた。
ヴィルサレム公爵家は魔法の名門だからだろう。
とはいえ、「分かった」と一言だけ、俺のお父様は俺のお願いを聞いてくれた。
とはいえ、気が付けば2週間も経過していたけれど。
その間は変わらず魔法の修練と読書で潰していた。
「いや、こちらこそすまない。忙しいだろうにわざわざ出向いてくれたんだ……早速だが俺に剣を教えてくれ」
「それは構いませんが……本当に俺でいいのでしょうか?」
モリアは困ったように、眉を八の字にする。
「不服か? モリアはオーガを倒した時の剣捌き。剣は疎いが機能美の極致だと思ったんだ。正直、美しささえ感じたよ。であるなるば、そいつから習ってみたいと思うのが本能だと思わないか? むしろ、剣を習うのであれば、モリアから習いたい」
「そこまで、お褒め頂けるとは……それであれば微力ながらお手伝いさせて頂きましょう」
「ありがとう。これからは、言いたいことははっきりと言ってくれ。その方が助かる」
「それならば、まずひとつ。アリス・キングストンご令嬢から伝言ですが、またお家にお邪魔させてもらうと仰ってました」
「そういうことではないが。はぁ……好きにしろと伝えておけ」
俺がそう言うと、モリアは苦笑いを浮かべて、
「分かりました。あくまで個人的なお願いではありますが、アリス様と仲良くして頂ける幸いです。アリス様もまだ幼いのに色々と苦労されてますから」
「……善処しよう」
モリアとアリスの関係は分からないが、すごく気にかけていることは分かった。
とはいえ、アリスの執事をヴィルサレム公爵家で懲らしめた時以降、アリスはやたらと俺に構おうとしてくる。
原作だと同じ悪役サイドだからだろうか……。
まぁ、悪役サイドだろうが味方は多いに越したことはないから、あえて気にしないようにするが。
「それでは早速ですが……お教え致しましょう」
「よろしく頼む」
俺は頭を下げると、モリアは一瞬だけ驚いたような表情をする。
どこに驚く要素があったのか分からないが……最近、ちょっとのことで驚かれているような気がしないでもない。
そのせいで慣れてしまった自分がいるけれど……。
まぁ、今はそんなことはどうでもいい。
「それでは、こちらをお持ちください」
モリアから渡されたのは1本の木刀。
長さは1メートルほど。
鉄ではないが、しっかりとした重みを感じる。
「最初は少し長いと感じるかもしれませんが、振っていれば慣れていきますので」
「別にどちらでも構わんぞ」
「まずは好きに剣を振ってみてください。腕だけで振ろうとせずに全身を使って振るのです」
「やってみよう」
俺はモリアがオークと斬っていた時の動きを思い出す。
まずは肩甲骨から流して、腰で追うイメージで振る。
ただし、木刀の重みを利用するが決して振られないように体幹を意識する。
振り終わりは次の一刀が振りやすいように足のポジションを変える。
それの繰り返し。
うむ。たしかに、振るたびに慣れてきた。
「ははは……さすがです。剣の振りに関しては言うことありません。実は既に習われていたとか……?」
「生憎、剣を振るのは今日が初めてだな」
「いやぁ……やっぱりイヴィル様は天才ですね」
小学生の頃に野球をやっていたおかげだ。長い棒を振るのは多少慣れている方のはずだ。
その経験が活かせて良かった。
ただ、それはそれとして、
「何を言っている。俺はまだまだ素人だ。褒めるくらいなら手厳しく頼む」
調子になってはいけない。
天狗になれば、隙が生まれる。
前世のコンサル時代、やるべきことを疎かにして事業を失敗した顧客をちょくちょく見かけていた。
何事もしっかりとこなすに越したことはない。
「分かりました。その言葉後悔しないで下さいね」
モリアは真剣な眼差しで言う。
「とは言っても、あとはこの基礎に加えて実戦だけですから、実は教えることは少ないんですけどね。攻撃をいなすのも、攻撃に繋げるのも今の動きから派生するだけですので」
「ほぉ……つまり、基礎を忠実にこなすということだな。気に入った」
基本的なことを突き詰めるだけで最強になったボクサーだっている。
やはり新たな知識を学べるのは気持ちが良い。
全てにおいて共通点が出てくるからな。
それをパズルのように組み立てるのは、やはり気持ちが良い。
「ところで、モリア……そこのいる男はお前の知り合いか?」
俺はモリアに尋ねる。
俺がモリアと訓練を始めて、10分後くらい経過したくらいに金髪の男が修練場の隅でずっと俺を観察していた。
さっきから触れずにおいていたが、少しばかり面倒に感じていた。
モリアは俺の問いに答える。
「え、えぇ……俺の上司みたいなものです」
「ほぉ……? たしかモリアはギルドに所属しているだったな」
「仰る通りです……イヴィル様が良ければご紹介してもよろしいでしょうか?」
「最初からそのつもりなのだろう? モリアの頼みなら構わん」
そう言ったあと、金髪の男は俺とモリアの視線に気づいて大きく手を振りながらこちらに走ってくる。
「初めまして、イヴィル君! 僕はリーン・ラッカスター! モリア君が所属しているギルドでギルド長をやらせてもらってるんだ!」
「ギルド長だと?」
ギルド長といえば『月と魔法で踊る』の主人公にやたらと入れ込んでいたやつだ。
キングストン支部のギルド長は王国内でも最強との声もある実力者らしいが……作中ではその実力は描かれていはいない。
まぁ、実力があろうがなかろうが俺にとっては敵対キャラに当たることには変わりない。そんなやつが一体なんの用なのだろう。
「えー、リーンさんも仰っていた通り、彼はリーン・ラッカスター。キングストン支部でギルド長をしています。今回、どうしてもイヴィル様にお会いしたいと聞かなかったものでして……リーンさん、失礼のないように頼みますよ!」
「まかせてよ!」
「はぁ……不安だ」
モリアは溜息を吐く。
上司と部下の関係で見るならば、モリアの行為は失礼にあたるのだろう。
しかし、リーンは気にも留めない。
つまり、それだけ円滑な人間関係ができているだろう。
「それで俺に会いたいと言っていたが……何の用だ?」
俺はリーンに尋ねる。
現状、俺とリーンを結びつけるのならば、先日攻略したA級ダンジョン『破滅の洞穴』の件だろう。
考えられるとしたら、事情聴取かアイテムの没収あたりだろうか。
リーンの出方次第であるが……、
「あ、先に言っておくと変異ダンジョンで獲得したアイテムとか、そういったことで来たんじゃないよ? 単刀直入に言うとイヴィル君に興味があって来たんだ。君の話をモリアから聞いて、どんな子なんだろう? って気になったんだ!」
「それはどうも」
まぁ、『破滅の杖』を没収するみたいな話だったらお帰り頂いていたところだけれど、そうじゃないなら今は良しとするか。
とはいえ『月と魔法は踊る』では敵対キャラではあることに変わりはないから警戒はしておこう。
「はっきり言うとね? 変異ダンジョンを一人で攻略するのは《《並みの冒険者》》ではできないんだよ。つまりめちゃくちゃ名誉なことなんだ」
リーンはそこから少し早口で話し始める。
「それなのに、イヴィル君はむしろ隠したがっている。多分だけど、それなりの理由があるんだよね? 明らかにイヴィル君は同世代の子と比べて賢すぎる。あぁ、もちろん。その理由を僕は根掘り葉掘り聞こうだなんで思っていないよ。嫌われたくないからね」
「単純に目立ちたくないからなんだがな。このまま、黙ってくれると助かるよ」
「もちろんさ! それにしても……やはり君はすごい! 目立つというのは、それだけ角が立つし敵も作る。大人だって見栄を張って自慢したいやつばかりなのに……やっぱりイヴィル君は面白いね!」
「いや……お前が勝手に喋ってるだけだろ」
「それもそっか!」
こいつ……こんなにおしゃべりなやつだったのか?
やたらとテンションが高いし……面倒そうだな。
「時にイヴィル君。少しだけ相談してもいいかな?」
「叶えられるかは分からないが、聞くだけ聞いてやろう」
「本当かい!? 聞いてくれるだけでもうれしいよ!」
何故かリーンはめちゃくちゃ喜んだ。
もはや聞くだけ聞くと言ったからには、話だけは聞こう。
嫌な内容であれば、普通に断るつもりだ。
当たり前の話だが、俺にその相談を解決するために尽力しなければいけないという義務は存在しないのだから。
そんな予防線を張った後、リーンは相談内容を口にする。
「さて、相談というのはイヴィル君。君さえ良ければ僕と手合わせをしないかい?」
その内容はまったく予想にしていなかった。
「ほぅ……?」
王国内最強との手合わせか。
きっと退屈しないものになるに違いない。
俺の口角は自然と上がるのであった。