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目黒蓮は入学した時から特別扱いされていた。
「目黒家」といえば魔法界では有名な由緒正しき純血の家系。そのご子息ともなれば皆注目する。
おまけに誰もが振り向くような容姿だ。
関わろうとしてくる人間は皆、下心が透けて見えた。
「さすがだね、目黒家の君ならこんな呪文一発で成功させて当然なんだろうね」
「魔法史のレポート代わりにやっとくからさ、よかったら君の両親に僕を紹介してくれない?」
───────あからさまなお世辞と媚び売り。
「目黒くん、よかったらこのお茶どうぞ。うちの実家から送ってもらったの。実は私のお家も魔法省の神秘部の官僚と繋がりがあってね──」
「クリスマスに私の家でお父様がお偉い様を招いてパーティを開くの。よかったら招待状貰ってくれないかしら?」
────────婚約者の座を狙う猫なで声。
「目黒くん、我が家が所有する黒魔術の古書のコレクションに興味はないかい?君のような高貴な人間には価値がわかると思うんだ」
「マグル生まれのヤツとつるむのはと君の格式が下がる。うちのグループに入らないかい?皆君と同じ純血だよ」
───血筋を使って取り入ろうとする上級生。
彼らが見ているのは「目黒蓮」ではない。
その後ろにある権力や地位といった「目黒家」の看板である。
目黒に向けられる微笑みは将来のコネクションへの投資に過ぎない。
幼いながらに社会の縮図を見ているようだった。
気持ち悪い。
「特別」という概念が大嫌いになった。
いつしか目黒は心を完全に閉ざし、周りとは壁を作り誰とも関わらないようにしていた。
放課後は決まって1人で図書室で自習をする。
擦り寄る声もない。
ただ、羽根ペンで字を書く音と紙をめくる音だけが聞こえる空間。
この時間が1番落ち着く────
ドサッ!! バサバサバサァァッ!!!
そう思っていたのに。
急に目黒の目の前に大量の本がなだれ込んできた。
🧡「あぁぁぁっ!! ごめん!!」
顔を上げると隣に1人の少年が立っていた。
手には抱えきれないほどの本。運ぼうとしてバランスを崩したのだろう。
黄色いローブにネクタイ。ハッフルパフだ。
「ごめんやでぇ」と言いながらいそいそと目黒の前に転がった本をどかし彼のテリトリーに積み上げる。
バサッと本を開き彼も勉強を始めた。
そこからは再び静寂が訪れる──────
🧡「ゔぅ〜〜ん゙……んぇ…?」
🧡「む゙〜〜〜……ふぁぁ…」
ことはなかった。
隣から微かに聞こえる唸り声、視界の端で見える悩む仕草。
全てが騒がしい。
どんどん目黒の眉間に皺が寄る。
少し席を離れるか……そう思った時だった。
🧡「あっっ!それ! 1年の天文学の課題やん!!」
少年が目黒の手元のノートを指さして叫んだ。
目黒は険しい顔のまま少年の方を向く。
🧡「大人びとるから先輩やと思った!なんや同級生なんやん!なぁなぁ、ここ教えてや!
分からんくて頭爆発しそう!」
近い距離感で詰め寄られ目黒は少し困惑する。
今までご機嫌を伺うように近づいてくる人しかいなかったから。
🖤「えっと、ここは────」
思わず普通に少年に勉強を教えてしまう。
少年は長いまつ毛をはためかせながら、うんうんと聞いている。
ノートを凝視するために顔を近づけてくる彼からはお日様の匂いがした。
🧡「おぉぉ…!なるほど…教え方上手いな!!ありがと!自分、名前は?」
🖤「えっと…目黒。目黒蓮」
名前を言って彼のリアクションを待つ。
「目黒」と名前を出せば皆態度を変えるからだ。
🧡「目黒…カッコええ名前やな!!でも可愛ええ響きとかも取っつきやすいんとちゃう? 」
🧡「そうやな〜…めめとか! お目目のめめ!!」
予想していたものとは遥か に違う言葉が返ってきて目黒は面食らった。
🖤「お目目の…めめ?」
🧡「うん!可愛ない? いや?」
🖤「いや……別に。好きにすれば」
🧡「んふっじゃあ、めめやな!俺は向井康二!」
今まで見てきた人らとはまるで違う純粋な笑顔。
例えるなら太陽だった。
それから向井は目黒とすれ違う度に
🧡「めめ〜!やっほー!これからハッフルパフは薬草学の実習やねん! 」
🧡「めめ!今度の呪文学スリザリンと合同やって!一緒に座ろうや!」
などと手を振り声をかけてくるようになった。
目黒は久しく笑ってないせいか笑顔が上手く作れなかったが、小さく手を振り返すようにした。
もちろんそれを見て周りがスルーする訳もなく。
向井の事をヒソヒソと話す者たちが現れ始めるのだ。
♡「向井くんって最近目黒くんによく話しかけてるよね…?どういう関係?」
♢「あの子確かマグル生まれよ。目黒くんに取り入っておこぼれでも貰おうとしてるんじゃないの?恥ずかし〜…」
♤「身の程知らずって言葉知らねぇのかな笑」
♧「一般庶民の声にもちゃんと答えてあげる目黒くん優し〜」
もちろん目黒の耳にも届いている。
しかし、向井とは特に友達って訳でもない。わざわざ庇って怒る必要も無い。
そう思って全て聞き流す。
そんな中、廊下でたまたまハッフルパフの1年複数人と一緒にいる向井を見つける。
目黒は思わず影に隠れて聞き耳を立ててしまう。
☆「向井!お前スリザリンの目黒くんと関わるの辞めとけって!あの子、かの有名な目黒家の跡取りだぞ!?エリート中のエリートなんだよ?」
🧡「えっ?そうなん?」
☪︎「知らねぇの!?魔法界で知らない人はいないくらいだぞ!?」
🧡「あ〜…俺、マグル出身やから知らん!」
そう、向井は知らなかったのだ。目黒の家系が純血の中でも格式高い血筋である事を。
☪︎「最近向井さ、周りの取り巻きに睨まれてるのに気づいてないの?」
☆「そうだよ。先輩にまで目をつけられたらどうなる事か」
目黒は少し胸がザワついた。
周りの人間を取り巻いた覚えもないのに勝手に近づいてきたヤツらを自分の手下だと思われている。
逆に近づこうとしてこない者たちは自分がどんな人間かも知らないで、血筋だけで恐れている。
ただ穏便に学校生活を過ごしたいだけなのに。
しかし、そんな中で向井は不思議そうな顔で言ったのだ。
🧡「う〜ん…なんで家柄とか血統で接し方決めなアカンの?マグルとか純血とか家系とかよう知らんけど…みんな友達で良くない?」
☪︎「…何言ってんの…!?目黒くんと俺らは住む世界が違うんだから!」
🧡「住む世界?みんな魔法界に住んどるやん!みんなホグワーツの生徒やん!みんな一緒!」
☆「そういう意味じゃ…」
純粋なのかバカなのか。
だが、そんな向井の言葉が目黒の胸を軽くした。
彼は間違いなく目黒を「目黒家の跡取り」ではなく「めめ」として見てくれている。
🖤「……変なヤツ」
今まで近づいてくる人間全て眼中になかったのに。目黒の頭に向井という存在が離れないようになっていた。
3年生になり、必須科目に加え自分たちで好きな教科を選べる選択科目が増える。
向井と目黒は選んだ科目が偶然にも多く重なった。
🧡「あっ!めめ!占い学のこのページ分かる?俺今度あたりそうやねん!自分でメモしたはずやのに全くわからへん…」
🖤「俺がノートちゃんととってると思う?」
🧡「あ、めめ座学嫌いなんやったわ聞く相手間違えた」
🖤「失礼じゃない?笑」
必然的に一緒に行動する頻度が増える。気づけばよく隣にいるようになって、冗談も言い合える仲になっていた。
向井が隣にいることが増えたからか、目黒になんとかして取り入ろうとする者も、向井の陰口をいう者も徐々に減ってきた。
そしてもう1つ、目黒を変えるキッカケに出会う。
それはある日の週末のこと。目黒が向井に呼び出され、大広間へと向かった。
🧡「おまたせ〜!」
🩷「康二おそ〜い!先はじめちゃってるよ」
🧡「じゃあ1戦目は観戦やな!」
💙「おっ目黒じゃん」
💚「康二が友達つれてくるの珍しいね」
そこにいたのは、目黒や向井と同じ日本人だった。
よく見ると噂話をそこかしこで聞くような学校内の有名人が集結していた。
🤍「あ、しょっぴーそこでそれ出す!?卑怯じゃない!?」
💙「それがゲームってもんだろ笑」
❤️「ラウール、そこはね…(コソコソ」
💙「おい涼太それは不正だぞ」
テーブルの上には数々のボードゲームが置かれてあった。今はチェスをしているようだった。
🧡「めめも一緒にやったら楽しいかなって!」
🖤「俺も…?」
💚「大歓迎だよ、大勢の方が楽しいし!」
言われるがままボードゲームの輪の中に入る。
ここにいる者達は目黒を卑しい目で見るものはいなかった。
それどころか、彼らは寮の垣根も超えた仲だった。
💙「おいまて、コイツバカ強えぞ!」
🧡「めめすごい!!圧勝やん!」
🩷「フッ…次はそうはいかない…俺の騎士が火を吹くぜ!!」
🤍「佐久間くんそれフラグじゃない?」
ゲームなんて入学する前に家族としたくらいだった。こんな賑やかな休日は初めてだ。
🖤「…ふふっ…あははっ何それ笑」
🧡「…!!めめが笑ったぁ!」
目黒の顔にも笑顔が見られるようになる。入学して2年間笑い方を忘れた少年は、1人の純粋な同級生によって心を開き始めた。
.*·.⟡┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈⟡.·*.
あとがき
読まなくても️⭕️
【魔法界の血統について】
魔法使いの中でも、両親を始めとする先祖たちの血筋で血統が変わってきます。
────────
純血(Pure-blood)
▷先祖代々、魔法使いの血筋だけで繋がっている生粋の魔法使いの家系。
▷基本的に旧家・名家と呼ばれる。日本で言う舞踊や華道、茶道などの流派の家元といったポジションに近い感じです。
▷原作で言うとロン・ウィーズリー、ドラコ・マルフォイなどがこの血統です。
半純血(Half-blood)
▷「魔法使い」と「マグル」もしくは
「魔法使い」と「マグル生まれの魔法使い」の間に生まれた魔法使い。
▷家族(両親、祖父母)の誰か1人でもマグルがいれば「半純血」という扱いになる。
▷原作でいうとハリー・ポッター、ダンブルドア、スネイプ、ヴォルデモートなどがこの血統です。
マグル・マグル生まれ(Muggle-born)
▷魔法を使えない普通の人間を「マグル」と呼ぶ。
そんな「マグル」を両親に持つ子供が突発的に魔法が使える才能を開花させ、魔法使いとなる事がある。
それを「マグル生まれ」と呼ぶ。
▷純血主義者からは「穢れた血」「泥の血」と酷い蔑称で呼ばれることも。
▷原作ではハーマイオニー、嘆きのマートル、ハリーポッターの母親などがこの血統です。
────────
つまり、私たちは魔法使いの彼らからすると「マグル」という立ち位置になります。「マグル」は魔法使いの存在すら知らない設定なので、もしかしたら魔法使いは本当にいるのかもしれません。
【血統の割合】
魔法界の血統の割合でいえば
純血:30%以下
半純血:50~60%
マグル生まれ:10~15%
で、半純血が圧倒的に多いです。
ただ血統は魔法使いの才能や強さとは一切関係がないです。ただ純血主義者が誇りやステータスを気にしているだけです。
中には純血同士で子孫(跡取り) を残すために必死になってる人もいるみたいです。マグルと結婚した瞬間、勘当されるとか何とか。
目黒くんの花嫁候補の座狙っている子がいるのも納得です。
コメント
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