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翌朝、ジュレイとリボルは工房の作業机いっぱいに紙を広げていた。
相談受付の名刺。聞き取り記録。店ごとの噂。借入状況。立ち退きの打診。土地売買の下書き。
ばらばらだったものを、一本の線でつなぐ。
「ここ」
ジュレイが赤鉛筆で丸を打つ。
「悩みを聞く」
「ここで弱みを分類」
リボルが青い線を引く。
「恋愛、借金、家族、病気、評判」
さらに線が伸びる。
『噂を流す』
『孤立させる』
『条件を出す』
『売らせる』
机の上にできあがったのは、まるで処理工程表だった。
サペは息を吐く。
「店も恋も、同じ流れで扱ってる」
「人じゃなく、案件として見てるから」
マイナが言った。
ズジは図をのぞき込み、顔をしかめる。
「記事にしたら刺さる。けど、図だけじゃ“たまたま重なった”で逃げられる」
その時、リボルが紙の端を叩いた。
「逃げ道はあるが、一本に集まる場所もある」
相談票の原本、営業資料、出入りの記録。
すべて最後は、箱庭座の裏手にある旧搬入口の倉庫へ流れていた。
「保管庫か」
スレンが目を細める。
「なら、中を見れば終わりが早い」
ジュレイは首を振った。
「見ただけでは足りない。誰が、何の目的で、どう使ったかまで通したい」
サペは机上の矢印を見つめた。
弱みを聞く。噂にする。逃げ場をふさぐ。条件を出す。売らせる。
黒い名刺一枚が、ここまで長い手になる。
「これ、みんなに見せよう」
サペが言う。
「怖がらせるためじゃなくて、どこで切ればいいか分かるように」
ローレリーズの菓子箱の横で、その流れ図は静かに乾いていった。
まるで黒い仕組みの血管図みたいに。