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「何、これ?」
それは黄色い液体だった。澄んでいて、汚い印象はなかったが、手ですくうとどろっとしていた。
「んー、なんか、アレみたい。ハチミツ」
愛梨ちゃんが黄色い液体を手ですくいながらそういった。確かに、見た目はそういう感じだ。本当にハチミツなら、舐めてみれば分かるのかもしれないけど……それはちょっと嫌かも。
「まあ、わかんないけど、とりあえず危険はなさそうっぽい?」
「それに、他の場所に行くにはこの中を通るしかないよね……」
得体のしれない液体の中を通るのはちょっと嫌だったけど、そうも言ってられない。私たちは謎の黄色い液体の中を歩いた。
「うわぁ、なんか、べとべとする……」
「けど、ミミズとかいないから、さっきよりはマシかなぁ」
「それはそうかも」
得体のしれなさはあるけれど、とりあえずはっきりわかる実害はないので、さっきよりはマシかもしれない。けど、なんか、嫌な予感がするなぁ……。そんな不安を感じつつ、どうにかプールを横切り、私たちは奥の扉までやってきた。
「開けるよ」
扉を開けると、そこには……。
「えっ、なにこれ、森?」
そこも室内であるはずなのに、部屋の中には背の低い木がびっしりと生えていた。
「温室、なのかな……?」
「これじゃ、向う側がどうなっているのかわからないね……」
みんなしばらく呆然としてしまう。
「うーん、でも、ここでじっとしていても仕方ないし、進もうよ」
と、愛梨ちゃんが言った。
「そうね……、行けるところまで、行ってみようか」
みんなも決心して、進み始めた。けれど……
「うわっ、すっごい茂み! みんな、大丈夫?」
「自分がどこにいるかわかんなくなりそう!」
この部屋は、少し進むと藪のようになっていて、すぐ後をついていっているはずなのに、前の人の姿さえ見えなかった。おまけに何度も木にひっかけられて、なかなか前に進めない。もたもたしていたら、置いていかれそうだ……、って、あれ、そういえば、前も後も人の気配がないような……。うそ、みんなとはぐれちゃった!?
「おーい、みんな、いる!?」
……。やばい、返事がない! 本格的にはぐれたかも!?
(そのころの愛梨)
「やった、開けたところに出れたよ! ……って、あれ? アタシしかいない?」
せっかくあのうっとおしい藪を抜けたのに、みんないつの間にかいなくなってる!? しまったなぁ、アタシが先に進みすぎたのかな。どうしよう、待ってたらみんな来るかな? ここなら開けているから、見つけやすいよね。でも、合流できたとしても、ここはまだ途中、ゴールじゃないみたい。まだ藪は続いている。先に進んだら、またはぐれちゃうかも? 何かこう、役に立ちそうなものないかな。あんまり期待できなさそうだけど、一応あたりを探してみようかな。
「うわっと、何これ? 蜘蛛の巣?」
気が付かなくて思いっきり顔突っ込んじゃった。よく見るとここ、蜘蛛の巣だらけだ。
「やだなぁ、蜘蛛嫌いなんだよね~。今のところ、巣があるだけで蜘蛛いないみたいだけど……。さっと通り抜けちゃおっと」
と、思ったんだけど、なにこれ!? 蜘蛛の巣ってこんなに丈夫だっけ? スカートにひっついて取れないんですけど!
引っぱってもとれない! ていうか、むしろだんだん蜘蛛の巣が絡まってきている! ちょっと、何これ!?
と、そのとき、後ろでぽと、と何か軽いものが落ちたような音がした。……嫌な予感がする。
(続く)