コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
恵菜の後ろにいたのは、スーツ姿の純。
ブラックのシャドーストライプのスーツに身を包み、淡いブルーのネクタイを締めた彼は、恵菜を始め、早瀬親子、後輩女子の理穂の元へ、悠然と歩み寄る。
堂々とした純の振る舞いに、恵菜の鼓動が大きく脈を打ち、彼の纏うスーツが、まるで戦闘服に見えるのは、気のせいだろうか。
「あ……あんた…………!」
勇人は、以前、恵菜に手を上げようとして阻まれた時の男だと気付き、顔を顰めた。
「じゅ……純さん!?」
「俺が本社から戻って、ちょうどパーク内に入った時、君が切羽詰まったような顔をしながら、急いで正門を抜けるのを見たんだ。尋常じゃない様子が気になって、速攻で仕事を片付けて退勤したら、この有様だ」
恵菜を守るように立ちはだかった純は、三人を一瞥した。
「ちょっ…………誰よ! あなた!!」
勇人の母、良子は、声を上ずらせながら純をキッと睨む。
「私ですか? 申し遅れました。恵菜さんの恋人の谷岡純と申します」
「おい! 恵菜! どういう事だ? 俺がいるっていうのに、もう男を作ったのか!?」
勇人が息巻いて恵菜に詰問してくる。
「早瀬!? 何言っ──」
「恵菜。万が一の時…………俺が守るって言っただろ?」
純が勇人を見据えたまま、彼女を手で制止すると、恵菜だけに聞こえる声量で小さく呟いた。
「勇人さん、でしたっけ? 誤解のないように申し上げますが、私が恵菜さんと出会ったのは、彼女が離婚してからなので、恵菜さんが君にそんな事を言われる筋合いはない。それに、以前君は、この公園で、彼女に手を上げようとしましたよね?」
純の眉根に皺が刻まれ、鋭利な眼差しで勇人を刺す。
「あの時、私が止めに入りましたが。恵菜さんに手を上げようとしていた男が、『俺がいるっていうのに他の男を作ったのか』なんて図々しい事、よく言えるものだ。しかも恵菜さんの事を陰でブタ呼ばわりまでして。彼女を愛しているなんて言ってる割には、あまりにも言動が違い過ぎるのでは?」
「……っ!」
「勇人!? あなた、恵菜さんに手を上げようとしたの!?」
良子に責められ、純から顔を逸らした勇人は、チッと舌打ちをする。
「そこにいる彼女は…………もしかして、勇人さんの不倫相手とか?」
女子力を意識した汐田理穂を見た純は、雰囲気から感じ取ったのだろう。
勇人から不倫相手の理穂に標的を変えると、整った眉をピクリと吊り上げた。