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「あなた…………この男性の不倫相手の方ですか?」
純は勇人を一瞥した後、躊躇なく、理穂に質問を投げ放つ。
「えっ…………」
表情を怯ませた理穂に、彼は、この女が恵菜を苦しめた原因のひとつだと確信した。
「あなたは……恵菜さんに誹謗中傷を始め、彼女の存在自体を否定する事を言いましたよね? 正妻だった女性に、よくもそんな事が言えたものだ。本来なら、あなたは訴えられてもおかしくない立場にあったんですよ?」
「っ……なっ……何よ! それがどうしたっていうの!? 言い寄ってきたのは勇人センパイだし!」
果敢なのか、あるいは神経が図太いのか、後輩女子は、むくれながら負けじと純に捲し立てる。
不倫相手の理穂は、意外にも肝が据わっているらしい。
「恵菜さんは、バカバカしくなって、訴えなかったようですが……。訴えられたら、あなたは下手したら、多額の慰謝料を支払う事になっていたでしょう」
普段、爽やかな顔立ちの純が、次第に不敵な笑みを映し出す。
「既婚男性と不倫していた、なんて、あなたのご両親や職場の人間が知ったら、信用を失うだろうし、あなたも不倫当事者として、話のネタになっていただろうな……」
片側の口角を僅かに上げた純の表情は不気味さを滲ませ、恵菜の背中にゾクリと冷気が迸った。
(ヤバい……。こんな純さんの表情…………初めて見たよ……)
恵菜は、純と三人が直面している状況を、息をひそめて見守っていた。
理穂に目を据わらせていた純が、最後に勇人の母、早瀬良子に冷淡な眼差しを突く。
「お義母様は、子離れが全然できていないようですね。だから息子が、自分の意思で物事を決められない、マザコンになってしまうんですよ。挙げ句の果て、ストーカー紛いの事をさせて、ここまで来ると、犯罪と同レベルですよ?」
「まっ…………マザコン!? はっ…………犯罪ですって!?」
純はハァッと大きく短いため息をつくと、前髪をぞんざいに掻き上げ、再び良子と勇人を、それぞれ見据えた。
「あなた方は、彼女を労りもせず、見栄と体裁を取り繕う事しか頭になかった。お義母様のプレッシャー、さらには息子さんの不倫で、恵菜さんは、心身ともに大きなダメージを受けた。その影響で、彼女は半月で体重が十キロも落ちてしまったのに…………あなた方は、恵菜さんの体調を気遣う事すらなかった……!」
純は激高しているのか、冷酷な目つきで元姑を貫く。
「…………自分が何度も傷付けられた人間たちの元へ、また戻りたいなんて…………思うワケがないだろっ……!!」
自らノリが軽くて大袈裟な性格、と言っていた彼が、怒声を抑え込むように、早瀬親子に言い放った。