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「あの……そのほうがよろしかったでしょうか?」
「は?」
そのほうとは、どのほうだ?
サーシャは意味がわからず、瞬きを繰り返す。
こイケメンに腕を掴まれてから、自分は一言も喋ってはいないと思っていたけれど──
「恐れながら、あなた様は今、「四の五の言わずにさっさと浄化しろよ」と罵倒されたほうがまだマシと仰っておりましたので……そうすべきか、わたくしは大変悩んでおります。ただ、たとえ命令であっても、女性に向かってそのようなことは言いたくありません。いっそ死ねと命じてください。あと、じゃがいもは今すぐ拾わせます。あなた様のお手を煩わせるなど論外でございます」
「……はぁ」
イケメンの目線一つで、じゃがいもを拾いだす騎士たちを横目に、サーシャはそんな気の無い返事をしてしまう。
けれど内心冷や汗をかいていた。これまでつらつらと考えていたことは、しっかり声に出してしまっていたようだ。
たった一人の家族である母が鬼籍に入り、独り暮らし生活を始めて気付けばもう5年。
寂しいという感情はとうに褪せてしまったけれど、独り言が口に出てしまうようになっていた。
そのことを丁寧に指摘されると、とても居心地が悪い。すっかり無くしてしまった羞恥心が生まれてしまう。
久しぶりに味わう恥じらいという感情は、心地よいものではない。このまま顔を覆って自分の殻に閉じ籠りたい。
だができない。未だにこのイケメンに腕を掴まれているせいで。
加減はしてくれているので痛くはないが、いい加減、手を離してほしい。
「あの……とりあえず、立ち話もなんですから家に入りませんか?」
イケメンといえど、この男たちは不審者だ。
なのに家に招き入れるなど、警戒心は無いのにも程がある。もちろんサーシャとて、こんなこと言いたくなかった。ただ言わざるを得なかったのだ。
イケメンがサーシャの腕を掴んだまま先程からずっと、口汚い言葉をブツブツと呟いているからだ。サーシャの要望を叶えるために。
「罵り言葉は結構ですので、手を離してください」
少し語尾を強めてお願いすれば、イケメンはパッと手を離すと「失礼しました」と言って深々と腰を折った。そして──
「では、参りましょう」
イケメンは、サーシャの手を自分の腕に引っ掛けて歩き出す。向かう先はサーシャの家だ。
……ちょっと待って。ここは、あなたの家じゃないんだけど。
そんな突っ込みを心の中で入れながら、サーシャはしぶしぶ足を動かした。
コメント
1件
うわ、サーシャの独り言が全部バレてるの、めっちゃ気まずい(笑)。王子の「♡♡♡と命じてください」とか真面目にブツブツ呟き出すギャップがツボでした。しかも腕を組まされて強制エスコートされる展開、押し切られ感が逆に面白い。続きが気になります!
当麻月菜
1,617
#ハッピーエンド
当麻月菜
2,277
#恋愛
ばたっちゅ
4,175
紫陽花
304