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今日は水曜日。フリースクールは休日だ。しかし、私は頭を悩ませていた。
昨日、希空さんから驚きの言葉が出た。
「人間は嫌い…かぁ」
まっすぐ私を見て、堂々としていた。あの言葉に嘘はない。ずっとそう思ってきた人の態度だった。しかし、人間が嫌いということは自分も嫌いなのだろうか。希空さんは自分自身をも嫌ってしまっているのか。
そんな疑問が浮かんできて、朝から希空さんについての記録をもう一度漁っていた。休日は休日らしく休まないといけない。だがしかし、私がそれを許さなかった。
「んーっ、はぁ…」
2時間程度調べ物をし、今は11時。昼には少し早すぎるが、小腹が空いてしまった。そしてなんとなく、伊吹ちゃんを思い出した。
ご飯の量を食べられる量に減らした日、その半分の量を食べることができた。初日は何も食べられなかったのだから、これはいい兆候だ。
沙良ちゃんと武流くんの自己記録帳に手を伸ばし、中を見る。2人とも自分の悪いところがわかったらしい。直すことは簡単では無いから、少しずつ覚えられるようにサポートしようと意気込む。
そして、希空さんの自己記録帳に手を伸ばした。中を見ると、綺麗で見やすい字がきちんと並んでいた。
7月○○日 沙良さんと武流さんが言い争いをしていた。いい加減先生に何か言われ、2人とも改まって自分の言動について考えていた。バカバカしい。 茉子さんと藍琉さんもだ。ずっとくっついていて、磁石じゃあるまいし。もっと自立したらどうなんだよって話だ。あぁ、バカバカしい。それに、こんな風に人のことを思ってしまう自分もバカバカしくて、いなくなればいいのに。
きれいな字とは対照的に、内容は人間が嫌い、という希空さんの言葉を忠実に表したものだった。フリースクールの子も、自分のことも嫌っている。バカバカしいなんて言葉をきっとこの子は正しく使っている。本当にバカバカしいと思っているのだ。
「こりゃ困ったな…」
希空さんの抱えているものは、今の希空さん1人では抱えきれないものだ。1つの荷物だけで精一杯で、他の荷物も抱えられないほどの。一般的に、そんな荷物を一緒に支えてあげるのがカウンセラーや家族、友達というものだ。しかし、その人間すらも嫌っているということは…。
「あぁ、本当につらいだろうなぁ」
どうにか支えてあげたい。でも、どうしたら支えてあげられるだろう。
考えに考えていると、チャイムが鳴った。
「はーい、え?恭介?」
「久しぶり、しおり。どんな様子が見に来た」
右手に掴まれたコンビニ袋を掲げながら微笑む恭介。きっと私のオーバーワークを心配して来てくれたのだろう。
「じゃあこっち来る?」
「えっ、スクールの方入っていいの?」
「休みなの想定して来たんでしょ?」
よくわかってるね〜と言いながらスクールの方へ入っていく。
少しスクールの中を案内することになった。
「ここが個室。中は机とスタンドライトと椅子だけで、簡素にしてるよ」
「すご〜」
「こっちが居間」
恭介は、わぁと言いながら中へ入っていく。
「そこのふすまを開けたら縁側だよ」
開けていい?と言いながら、もう開けている恭介を見て笑ってしまった。
「きもちいなぁ…最高の居場所だね!」
「でも、私が不甲斐なくてさ…」
なになに?と言いながら、私の悩みを聞いてくれた。
「なるほどねぇ…人間関係って難しいよね」
さすがに部外者にスクールの生徒の事情を一から説明するのはよろしくないので、それとなく遠回しに言った。
「自分のことに悩んでる子ってたくさんいるけど、やっぱりみんなちょっとずつ違うじゃん?」
「うん」
「やっぱり、自分で解決できる力を身につけさせてあげるのが1番将来のためにもなるんじゃない?」
「そう、なんだけど。スクールの子たちは身につける前に苦しくて苦しくて、どうしようもなく悩んでる子たちなの。まずは心を楽にしてあげて、それから力を身につけるんだよ」
そっかぁ、といいながら一緒に頭をひねる恭介。やっぱり優しいなぁと心の底から思う。
「悩むにはやっぱりエネルギーがないとね!お昼にしよ!」
「ただお腹がすいただけでしょ」
「バレた?」
とりあえずご飯食べよう
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