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「いやぁぁああ!ミミズッ!!」
「ミミズごときでうるせぇな…」
「はぁ!?」
沙良ちゃんと武流くんがそんな会話をしているのを、みんなで笑って見ていた。
3時間目。今日は曇りで畑作業が捗る。
「ミミズはね、土を綺麗にしてくれるの。綺麗にっていうか、レベルアップかな。質のいい土にしてくれるから、大事な存在なんだよ?」
私の言葉を聞いてすぐに武流くんが反応する。
「だってよ。ミミズを敬え」
「敬われるような見た目じゃない!早く土に戻せよ〜っ!」
「あらら…」
前回とは違う、2人とも楽しそうな会話だ。自然と雰囲気も明るい。
「茉子ちゃん。これ運ぶの手伝ってくれる?藍琉ちゃんはそっちの雑草を抜いてくれるかな」
『はーい』
茉子ちゃんと藍琉ちゃんにわざと違う指示を出す。あまりくっつかない方がいいからだ。
2人は仲がいいけど、ヒートアップしたらそれは共依存だ。あまりいい関係ではない。だからこそ、一人でいられるようにする。
「ありがとう。茉子ちゃん」
「先生、あの…」
少しためらう茉子ちゃん。何事かと思い、なぁに?と続きを促す。
「私と藍琉を離そうとしてますか」
意外な質問に言葉が詰まる。
子供というのは本当に鋭い。悟られないよう配慮していたつもりだが、やはりバレてしまった。なら仕方がない。
「うん。二人の関係性は続くと良くないから」
「なんで…」
「茉子ちゃん、一人で行動できてる?」
茉子ちゃんは目を見開く。どこからどこまで言っていいのか、詮索しながら続きを話す。
「無理に友達を増やせとは言わないけど、藍琉ちゃんとだけ仲良くしてると、それは共依存になっちゃうんだよ」
「違う、先生…私は藍琉を助けてあげてるの」
助けてあげてる、という思いもよらない言葉が出てきた。私はどう返せばいいのか分からず、オウム返しをした。
「藍琉、友達ができなかったから…だから私だけが藍琉の友達なの!」
「そうだったんだね。うん、わかった」
私の言葉を聞いて、茉子ちゃんはホッとした顔をしていた。そして、一緒に畑の方へ戻っていく。
これを言うのは心苦しいが、力ずくで喉を開く。
「でも、見て。茉子ちゃん」
「え…?」
指を指した方向を茉子ちゃんは向く。そして、息を飲んだ。
「藍琉ちゃんはもう、一人で大丈夫なんだよ」
「そんな…」
ここからどう成長するかは、茉子ちゃんの課題だ。もし藍琉ちゃんの人間関係に踏み込むようなら、ちゃんと話をしなければならなくなる。
「おぉ〜。雑草もほとんど抜き終わったねぇ」
みんなの元へ駆け寄る。藍琉ちゃんと夢菜ちゃんがたくさん雑草を抜いたことを自慢する。その様子に私は微笑み、茉子ちゃんは下を向いていた。
「先生、夏野菜ならまだ間に合うんじゃないですか?きゅうりとか…」
「たしかにねぇ。種買っておこうか?」
良平くんの提案に賛同の意を示す。みんなも野菜を育てることに前向きな表情を見せていた。
「明日で畑も仕上がるし、来週は種まきでもしようか」
『はーい!』
「さようなら〜」
下校時間。一斉にみんなが帰っていく。
「あ、茉子ちゃんのお母さん。少しいいですか?」
「はい…?」
今日あったことを話す。茉子ちゃんが感じていることはわからないけど、少なくとも前向きな姿勢であることを伝えた。お母さんの表情は、少し嬉しいような、悲しいようなものだった。
「そうでしたか…ありがとうございます。夏休みが明けたらクラスに戻れるようになりますかね」
「わかりません。夏休みが終わると学園祭があるので、その雰囲気についていけないこともありますから。でも、胸を張って戻れると言えるよう、私も頑張ります」
「ありがとうございます…!」
とりあえずの仕事は終わり、報告書をまとめようと外の階段へ足を伸ばす。すると、玄関に希空さんがいるのが見えた。
「希空さん、親御さんは?」
「まだ来てない」
下を見つめながら答える希空さんは、少し哀しそうに見えた。
「雨が降るかもしれないし、中に入ってていいよ?私親御さんに連絡するね」
何も言わず中へ入っていく希空さんはやはり、暗い表情をしていた。
そして、私たちは今までで最大の危機に直面することになる
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