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第12話:大和国での国軍(サムライ)とネット軍(ニンジャ)
ネット軍の拠点
都心から離れた高層ビルの一角。
窓にカーテンはなく、壁一面に大型モニターが並んでいた。
そこに映るのは市民の買い物履歴、通話ログ、街頭カメラの映像。
ネット軍第3隊と呼ばれるチームが、そのすべてを監視していた。
制服はなく、灰色のパーカー姿の若い男女。
耳には常にヘッドセット、指先は無数のキーボードを叩き続けている。
画面には──「今日の不穏ワード」「削除対象リスト」が次々と赤字で表示された。
市民の暮らしと監視
街のカフェ。
まひろは水色のTシャツに緑の短パン。ストローを噛みながら無垢に呟いた。
「ねぇミウおねえちゃん……なんで店のWi-Fi使うと、すぐ広告が出てくるんだろう。
“ヤマトコイン推奨”とか“国軍イベント参加してね”とかばっかり」
ミウはモカのブラウスに水玉のスカート。ラベンダー色のカーディガンを羽織り、ふんわりと笑った。
「え〜♡ それはね、ネット軍がお手伝いしてくれてるからだよ。
市民が迷わず未来を選べるように、必要な情報だけを届けてるんだよ」
テーブルの上の端末には「昨日の発言は一部不適切でした」と自動警告。
まひろは首をかしげながら、「ほんとかな……」と小さく呟いた。
サムライとニンジャ
その同じ時間。
市街地では国軍(サムライ)の小隊が儀礼行進を行っていた。
濃緑の軍服に鉄鋼の徽章。腰に佩かれた儀礼刀が揺れ、整った足音が石畳に響く。
沿道の市民は手を振る。
その頭上を覆うように、ネット軍の監視ドローンが静かに旋回していた。
サムライは「見える力」、ニンジャは「見えない目」。
両者はまるで対の存在として、国の未来を演出していた。
裏の現実
ネット軍のモニタールーム。
「まひろ:危険度C」「ミウ:危険度E」
そんなタグが、市民データベースに付けられていた。
“ほんとかな”という呟きは、市民の疑念を誘う危険因子として監視対象。
“ふんわり同意”は、むしろ人々を納得させる材料として推奨されていた。
隊員のひとりが無表情に言う。
「今日も『考えてみよっか♡』で3万人の意見が誘導されました」
上司は頷き、冷たく返した。
「よし。ネット軍は市民の心を守る。守るとは、選択肢を減らすことだ」
緑の影
夜の街頭スクリーンでは、国軍の行進映像とネット軍の宣伝映像が同時に流れていた。
緑のフーディを羽織った**Z(ゼイド)**がモニターを眺めながら呟く。
「見える軍がサムライ。見えない軍がニンジャ。
力と情報、両方そろえば国家は完全体だ。
安心の緑は、知らぬ間に首を絞める色になる」
無垢な問いとふんわり同意、その裏でサムライとニンジャは表と裏から市民を覆い、
大和国は静かに完成へと近づいていた。