テラーノベル
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4日目。
乾パンが尽きた。
ほとんど一日を、マットの上で寝て過ごしている。
動くと体力を消費して、腹が減るから。
でも、寝てても腹は減る。
みんな、イライラしている。
雰囲気で分かる。
でも、誰も何も言わない。
それすら控えている。
先生は、ずっと外を見ている。
まるで雨の日の喫茶店にでもいるかのように。
「あ……」
先生は思いついたように立ち上がり、
どこかへ行ってしまった。
マリンが、ノクターンを口ずさむ。
先生の足音が、廊下に消えていった。
誰も追いかけなかった。
雨の音と、マリンの口ずさむノクターンだけが残る。
「……ねぇ、あの曲、もうやめよ」
誰が言ったのか、わからなかった。
マリンも何も言わず、
ただ、雨の方を見ていた。
僕は、目を閉じた。
腹の音が、どこかで鳴った気がした。
「なぁ、哲也。この分校が分断されてから、先生おかしくないか?」
ルートが近づいてきて話しかけた。
「誰がおかしくなっても、仕方ない状況だろ……」
「うむ……そうではあるんだが……」
「しっかし!腹減ったなぁ……」
コマッちゃんだ。
みんな、そうなんだぞ……
お母さんの作ってくれた弁当……
最後に食っておけば良かったなぁ……
ん?
最後?
俺、今……“最後”って思ったのか。
バカが。弱気になるな。もう小学生だぞ。
こういう時こそ……
「いいか、自分が弱い時こそ周りを見ろ……周りも弱ってる。テツはそういう人たちを助けてやるんだ。」
お父さんの言葉が頭の中で響く。5年前の村を襲った大震災の時にお父さんは自分の事を差し置いて周りの人を助けて回った。最後の一件でその家が倒壊して……帰らぬ人となった。
哲也は、会議室から出た。
泣きそうになったからだ。
みんなに見られたくなかった。
廊下を歩いていると、向こうから――
カツ、カツ……カツ、カツ……
先生が来た。
笑顔で。
お盆に、湯気の立つおにぎりを乗せて。
「哲也君、会議室に戻って」
「あ……はぃ」
その声も、微笑みも、
昨日と同じだった。
湯気の立ったおにぎりと先生が、
会議室に入っていった。
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