今回も動画を使わせてもらいました。
yaetといえば、定番の動画です。
できる限り似せましたが、実際の動画とは発言が違います。
ご本人様には関係ありません。
***
「っあ゙ぁ〜…」
ベッドから起き上がり、後頭部を掻く。
そしてスマホを手に取ると、通知が来てて、『yanくんまだ〜?』と、jpから。
「っやべ!」
そうだ。今日は撮影があった。
急いでパソコンの前に座り、マイクを準備して、ワールドに入る。
「ごめん!寝てた!!」
「あ、yanくん遅いよ〜?」
「本当、待ってましたから」
「ごめんって〜、んで、今日は確か〜…」
「こんな幽霊は嫌だ!で〜す!」
jpが盛り上げる。いや、ただうるさいだけ?
「…ふーん」
etさんの声が聞こえ、胸がドキッとする。やばいな、俺。声だけで反応するなんて。
「役割とかは決まってるよ〜!まずは〜、俺とetさんとttでやるぞ〜」
jpの声を合図に、俺らは透明になって、上から様子を見る。
トイレの花子さん…をテーマにして考えたらしい。
しばらくこのようなことを繰り返していたら。
「はい、次は〜」
少しテンションが上がるjp。
楽しんでんのかな。と、気に留めなかった。
「俺とnaさんと〜、」
少し間が空いた後に、俺の名前が入る。
「yanくんと…etさん!!… んで、naさんは幽霊で、 yanくんとetさんはカップル!!という設定で〜す!!」
「「えっ」」
思わず声が漏れると、etさんと声が重なる。
jp…お前……。
……あれ、何でetさんも声が出てるの?
疑問が頭の中に浮かぶ。
まぁ、大体理由はわかってる…けど……。
「…かっ、カップルとかっ…」
etさんが焦ってそう言っている。
そうだよな。嫌だよな。俺みたいな男とカップルだなんて。
やっぱりそれが理由か…。
俺は別に嬉しいけど…etさんからしたら…。
「そんな焦らないでよ〜w……あれ、yanくん声聞こえないけど大丈夫?」
俺の不安がどんどん募っていく最中に、jpの声ではっと我に返る。
「…うん、大丈夫だよ」
「お前…感情なくしたん?w」
ttに笑いながら突っ込まれる。
反抗しようと思ったら、jpの声で遮られる。
「はいはい、やってくよ〜」
いや、そんなこと言われても…。
台詞とか教えてくれないの…!?
アドリブでカップルの演技とか…絶対jp楽しんでんなぁ…。
「よし、んじゃあこーいう感じで」
jpから流れを説明されて、俺は「ん」と、返事してetさんの隣へ行く。
「……頑張ろ」
etさんにそう話しかけると、ぎこちない声で返事が返ってくる。
「あっ…うん、そーだね」
「……よぉし!なら、三!二!一! ……うわぁ…怖ぇ…」
演技が始まる。
え、ほんとにどうしよう。どうする?
なんて言ったらいい?
頭の中が混乱していると、あっという間に俺たちの出番。
「っ…」
俺が歩くと、隣でetさんが怖がる演技をする。うん、上手い。可愛い。
しかも、なんだかいつもより距離近い。
「……わっ…誰っ?」
jpを見て驚いて、急いで俺の後ろに隠れる。え、可愛い。
そう思うのと裏腹に、これを現実にしたいとか、でも、そうなることは二度とないとか、そう思って悲しむ、いつもと変わらない結末。
「…あ、大丈夫だよ、人だって」
後ろを振り返って、少し遅れてそう言葉を発する。
「…あっ、なんだ人か、ごめんなさいっ!」
「あっ、いえいえ…ここに二人で来たんですか?」
「あ、はい」
「ここほんとに出ますよ!!気をつけてください!!」
「えっ、本当ですか?怖い…」
そっと後ろに下がるetさんが可愛くて、愛おしくて、思わず…。
「大丈夫だって、俺がいるから」
と、発してしまう。
「お」
jpからそう声が聞こえる。
おい、漏れてんぞ。そんなこと言うんだとか、思ったんだろうな。後でいじられる運命しか見れない…。
…でも……etさんは、どう思っているのだろうか。
あぁ…ゲームだからって、相手の顔が見れないのが悔しい。最悪だ。
でも、もし付き合えば…今度は音声だけじゃなくて、顔も見れるし、触れることも…。
「…ありがとう、頼りになる!かっこいい!」
「え」と、言いそうになった言葉を呑み込んだこと、褒めてほしい。
「…w」
jpから軽く笑い声が聞こえる。抑えきれなかったのだろう。
怒ってしまいそうだけど、でも…こうやってetさんと演技だけどカップルになれたのはjpのおかげ。
もし、ここで一歩踏み出せなかったら、踏み出せなかったら……。
「っ…」
息を呑んで、意を消して声を発する。
「…俺がetのこと守るから」
呼び捨てして。守るってカッコつけて 。
これが演技なんかじゃなくて、いつか二人きりで言えるような関係になれたらいいのに。
そんな願いをして、また塵となって溶けて消えていくだけ。ふっと息をかけたら、どっかに吹っ飛んでいきそう。
「…ありがとう、……yanくん好き」
予想外の言葉が俺に伝えられる。
それも、想いを寄せている人に。
「……ぇ」
思わず漏らしてしまったこの声は、俺かjpか、あるいは二人ともか。
でも、そんなことより嬉しさと驚きで頭が混乱している。
え、どういうこと?好きって?
と、etさんに問いかけたい。
「…ぉ、俺……」
『俺も好きだよ』そう伝えようとしたら、頭の片隅に、etさんは台本があるんじゃないかと疑問が浮かぶ。
俺はもらってないけど、jpは俺のことを喜ばせるためにetさんに台本を用意したのではないか。
…、そうだよな。好きだなんて。etさんが言うはずない。
頭を振って、余計な思いを消し去る。
わざと咳をして、『俺も』と言いかけた言葉を誤魔化す。そして一言。
「……安心して」
チラッと後ろを振り返って、etさんを見る。
「…うん、安心する」
さっきよりもなんだかトーンが下がった声。そうだよな。etさんも本当は言いたくなかったよな。
「……」
これ以上何も言えなくなって、ただただ無言で建物の中に入ってった。
その後も、etさんのファンの役とかなんとか、etさんとの関わりがある役が多かった。
***
無事に終え、ワールドから抜け、音声だけを繋げる。
誰が編集するかも決め……いや、jpがなぜか自分から『やりたい!』と言っていた。
あいつ大丈夫か?
しばらくみんなと話し、一人一人通話から抜けていく。最終的には。
「んじゃあ、編集してくるわ、後でyanくん電話よろ〜w」
jpが抜けて、俺とetさんの二人きり状態に。
なぜかetさんも抜けないから、(嬉しい)何を話そうかと悩んでいると。
「…ねぇ、yanくん 」
まさかのetさんから話しかけられる。
「っどうしたのetさん」
「……今日は…ありがとね、ほら!カップルのやつとか引っ張ってくれたし!私…あんまわからないからさ、(笑) 」
「…え?etさんって誰かと付き合ったことないの?」
「えっ?うん…まぁ…」
まじか。誰かと付き合ったことあると思ってた。
驚きと喜びが心の中で騒ぐ。
「…yanくんは?」
etさんに尋ねられる。
「…yanくんは…ないの?付き合ったこと…」
「…えっ 」
予想外の言葉が俺に降ってくる。
「…ほら…引っ張ってくれてたから……慣れてそうだなぁ〜……だなんて、」
etさんが優しく笑って誤魔化す。
「…」
驚きで言葉が出てこず、固まっていると。
「…ごめんね…!やっぱ気にしないで!(笑)」
何も発しなかった俺に、etさんが違和感を感じたのか、さっき言った言葉を取り消す。
でも、俺は。
「…」
逃がしたくなくて。
せっかく聞いてくれたのに。
好きな人とあったことをなかったことにするだなんて、そんなの…。
「…ないよ」
「…、えっ」
「俺も…付き合ったことないんだよね…(笑)」
口を開けて息を吸う。
言おうとした言葉を頭に入れて、少し固まって考えて、また閉じる。
「……俺…演技頑張ったわ…(笑)」
唇を噛んで、はっと息を吸う。
気持ち悪いと思われるかもしれないけど。
「…相手が…etさん…だからさ」
言うんだ。
ドクドクと心拍数が上がる。
顔が熱い。
顔が見られなくてよかった。
「…どっ、どういう… 」
続けて『好きだよetさん』だなんて、そんなこと言う勇気だなんてなくて。
「…etさん…付き合ったことないって言ったじゃん?だから頑張ってよかったな〜…的な…(笑)」
そう言って、誤魔化す。
あの俺の勇気が、バラバラに砕けて消えていく。
「……そっ…か…そうだよね…!」
ちょっと声のトーンが下がったetさん。
あぁ…自分の顔が見られないのはいいけど、etさんの顔が見れないのがやっぱり悔しい。
「…ごめん…予定思い出したっ…」
抜けようとするetさん。
でも、俺はやっぱり、まだetさんといたくて。
特別な感情の人と、まだ一緒に、二人でいたくて。
「でもっ…」
思わず声が出る。
引き留めたのはいいけど、何を話そうか、全く考えてなくて。
それでも、好きな人を逃がすのは嫌で。
そんなことを考えていると、無意識を口が動いていた。
「でも…またこうやってカップル役とかするなら…相手は……etさんがいいな」
何を言っているのだろうか。
何を考えているのだろうか。
気持ち悪いとか思われていたら嫌で、否定しようとして口を開けて息を吸うと、俺より先にetさんが声を発する。
「そっ…か……」
声のトーンが上がっている。
照れている時の高さ。
頬が赤く染まっているのだろうか。
そんなことを思ったら、否定だなんてできなくて。
開けていた口をそっと閉じる。
「……あのね、…実は…わ、私も……」
プルルルルル…
俺のスマホから電話がかかってきて、etさんの声が途切れる。
「あっ…ごめん…聞こえなかった…」
電話を切って、もう一度聞き直す。
「…あ…ごめん…、!やっぱ何でもない!yanくん忙しいよね、迷惑かけたら駄目だから抜けるね…! 」
と、言われて。
思わず声を出して否定する。
「…迷惑じゃないよ」
そう言葉に出したときには、もうetさんは抜けていた。
「…」
座っているゲームチェアを回転しながら、さっき言われたことを思い返す。
『……あのね、…実は…わ、私も……』
あの続きは何だったのだろうか。
私もって?何を言おうとしてたの?
あの電話がなかったら、聞けてたのだろうか。
『迷惑かけたら駄目だから抜けるね…!』
迷惑じゃないよ。
etさんのためだったら、どれだけ忙しくても、 何時間でも、何年でも、時間を使うのに。
ゲームチェアを回転するのを止めて、さっき切った電話をかけ直す。
相手は……jp?
「……もしもし」
「あ、もしもし〜、あのさ〜、さっき切ったよね!?」
「……うん」
「え、なにその声」
「……jp、許さん」
「…あ、もしかして……まだetさんと話してた?」
jpは何かを察したように、声を出す。
「……そうだけど」
「…まじか、…ガチでごめん!!」
本気で謝ってくるjp。
「…あとちょっとで聞けそうだったのに〜!!」
「…え、なんか聞いたの!?」
「…聞いたっていうか……俺が言ったことに対して、実は私もって…」
「…え、その後は!?」
「……お前が邪魔したんだよ〜!!」
思わず大声を出してしまう。
いやでも、こればかりはしょうがない。
「…俺…めっちゃやらかしたやん……で、でもさ!!いいこと教えてあげるから!!」
「…なに? 」
「…ふっふっふ〜…俺も驚いたんだけどね、さっきyanくんとetさんがカップル役だったじゃん?あのときね、etさんがyanくん好きって言ったの覚えてる!?」
忘れるわけがない。
「うん、でもあれ台本読んだんでしょ?」
「いやいや、実はあれね…etさんも台本なしだったんだよ!!」
…え?
いやいや、まさか。
「え、じゃあなんで好きとか言ってくれたの?」
「わかんないけど…でも自分から好きって言ってくれたんだよ!?流石俺…カップル役にしてよかったぁ〜…」
etさんが、演技だとしても自分から好きって言ってくれた?俺に対して?
「…」
耳からスマホを離して、天井に向けて手を開いて上げる。
誰にも聞こえない声で、 届けられない声でそっと呟く。
「俺も…言えばよかった」
天井に向けて伸ばした手を、そっと閉じて握りしめた。
コメント
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いやまじであの時の🍫さんの「🍗くん好き」はまっっじで「ぐはっっ」ってなりましたよね、…
尊すぎてしにそうです
てんさいか?