私は自意識過剰でぎごちなかったが
美鈴はそういう私の心の中の小さな不
信感を見つけだしては、それを他の人々の
いる前でいかにも甘く美しい調子で
私に気づかせてはひそかに楽しむのだ
そんな風だったので美鈴が父に
私の将来の事を話し始めた時は
本当に驚いた
美鈴が父に私の見合いを勧めたのだ
考えただけでも不愉快だった
私はこの家を出るなんて考えたことがなかった
だってここは私の家なのだ!
美鈴の方が後から入って来たのに
そんなある日
私に青天の霹靂が起こった
「嫌よ!どうして私が
お見合いなんてしないといけないの?!!」
バンッとテーブルを叩いて私は叫んだ
「もう23歳ですもの」
と美鈴は隣に座る父に言った
「私は24歳であなたに嫁いでとても幸せよ
そろそろうちのかわいい娘の
ことも考えてやらなくては」
美鈴は父の前では私の事を
『かわいい娘』と呼んだ
「あなたに甘やかされて
生きているこの子が自然と良いお相手を
自力で見つけると本気で思っていらっしゃるの?」
「うちの(かわいい娘)の将来を
考えてやるのが私達親の義務じゃないかしら
あなたが一生手元に置いて面倒を見られる
おつもりなら別ですけれど」
そう言って美鈴は父にあの取りすました
親しげで意味深な微笑を向けた
―私はあなたと二人きりになって
過ごしたいの・・・
私の切ない気持ちわかって?―
「お見合いなんて絶対しないっ!」
そう叫んだけど勿論私の意見など
聞き入れられることはなかった
そして二人は私を部屋から放免した
私は庭の椿をいつまでも見つめながら
今話された恐ろしい自分の将来のことを考えた
どこの誰とも知らない男と
お見合いをさせられて
愛してもいない男の元へ嫁がされて
この家を追い出される・・・・
幼い記憶と母との思い出が詰まった
この家から引きはがされる
断然父に抗議してやる!
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