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る る あ ︵ ︵ 🌈🍑
かんすい
「……チッ、身体が重いな」 ブラック・クラウンを運転する先輩の手が、心なしか震えている。 あんなに強気だった彼が、大洗を出てすぐに激しい悪寒に襲われた。顔は火照り、呼吸は荒い。バリでの心労と、東北・茨城の強行軍が、ついに彼の強靭な肉体を蝕んだのだ。
「先輩、代わります。……休んでください」 「……バカ言え。……俺が、お前を……守るんだ」 そう言いかけ、先輩はハンドルに突っ伏すように意識を失いかけた。
路肩に車を止め、途方に暮れる私の前に、派手なオープンカーが急停車した。 「おっ、聖司じゃねぇか! こんなとこで何してんだよ」 現れたのは、先輩の大学時代の友人だという、いかにも遊び慣れた風色の男二人。
「……ありゃ、聖司、真っ赤じゃん。熱あんのか?」 「ちょうど俺らも伊豆でパーティーする予定なんだよ。このクラウン、俺が運転してってやるよ。お前らも来いよ、な?」 強引にハンドルを奪われ、先輩は後部座席で私に抱きかかえられたまま、友人たちの「バカンス」に巻き込まれることになった。
友人たちが手配した別荘は、重厚な先輩の別荘とは正反対の、大音量で音楽が流れる派手な空間。
食: 友人たちが庭で焼き始めた、豪快な**『BBQの伊勢海老』と『金目鯛のアクアパッツァ』**。
シーン: 先輩はベッドで泥のように眠っている。私はキッチンで氷嚢を作り、先輩の額を冷やす。 「……なぁ、あいつ、仕事じゃ完璧だけどさ。女の趣味は意外と地味なんだな」 友人の一人が、背後から私に近づき、缶ビールを差し出してくる。その目は、バリの男と同じ、獲物を見る目をしていた。
「……う……。……行くな、……離れるな」 うなされる先輩の手が、弱々しく私の裾を掴む。 あんなに傲慢で、支配的だった先輩が、今は私の助けなしでは起き上がることさえできない。
「……ここにいますよ、聖司さん。……どこにも行きません」 私は、先輩の火照った体を冷たいタオルで拭い続ける。バリで汚されたあの場所も、今はただ、先輩を癒すための体の一部として存在していた。
だが、部屋の外からは、友人たちの下品な笑い声が聞こえてくる。 「聖司が寝てる間に、ちょっと遊んでやろうぜ……」 ドアのノブが、ゆっくりと回る音がした。
私は、眠る先輩の耳元で小さく囁いた。 「……先輩、早く起きてください。……じゃないと、また私、奪われちゃいますよ?」
先輩の指が、ピクリと動いた。 薄く開けられた瞳には、熱病の霧を突き抜けるような、かつてないほどの狂気的な独占欲が宿っていた。