次の日から優羽はいつもの日常を取り戻していた。
山荘は本格的な秋の紅葉シーズンを迎え、紅葉を楽しみに訪れる登山客で賑わい始めた。
優羽は次の休日を利用して『peak hunt5』の撮影に立ち会う事になっている。
今東京では、岳大と井上が新店舗の建築やネットショップのホームページのリニューアル、そして来年の実店舗オープン時に販売する新作についての商品企画を練っている。
それと並行して、広告代理店の田村が店舗オープン時の人材確保や今後の宣伝広告などについて動いている。
そんな忙しい二人に代わり、優羽は遠隔からではあるが出来る雑用があれば全て引き受けるようにしていた。
山荘の仕事の合間にそれらの雑務をこなしていた。
その夜流星を寝かしつけた優羽は、事務仕事をしながら音を小さくしてテレビをつけていた。
テレビでは今大人気の若手俳優を迎えたトーク番組を放送している。
その俳優の名は大和翔真。イケメンの翔真は20代後半で、今や映画やドラマに引っ張りだこの人気俳優だった。
会話の中で翔真は登山とアウトドアが趣味だと言った。その瞬間チャンネルを変えようとしていた優羽の手が止まる。
気になった優羽はそのままその番組を見る事にした。
すると番組の司会者が質問した。
「登山は結構本格的なのですか?」
「はい。主に国内の山が中心ですが結構ガチですよ。大学時代は登山部でしたから今でもその時の仲間と山に入ります」
翔真はさわやかな笑顔で答えた。
「という事は、装備もかなり本格的?」
「もちろん装備はしっかり準備しますよ。自然をなめたら大変な事になりますからね」
翔真は真剣な表情で答える。
「ちょっと前に山ガールなんかのブームが起こったじゃないですか? だから今は結構おしゃれな登山ウェアがありますよね? ちなみに翔真さんオススメのブランドとかってありますか?」
「僕は『peak hunt5』をメインに揃えています。デザインがシンプルで上質なところが気に入っています。それに僕は登山家で写真家でもある佐伯さんの大ファンなので」
「さすがにお詳しいですねー。じゃあ『peak hunt5』はご自分で買いに行かれるのですか?」
「残念ながら『peak hunt5』はネットでしか買えないんですよ。だからいつもネットで注文しています。ただ先日ホームページを見たら来年実店舗がオープンすると書いてありました。店は長野にオープンするみたいなのでオープンしたら僕も行ってみようと思っています」
翔真は嬉しそうに笑った。
優羽は番組を見ながら慌てて岳大にメッセージを送った。
【今テレビで人気俳優が岳大のブランドを絶賛しています】と。
するとすぐに返事が来た。
【偶然僕も見ていました。嬉しいですね、今、井上君も横で見ていてお礼に新作商品をいくつか送ったらと言っています】
優羽は二人が番組を見ていたと知りホッとした。
有名人が直に宣伝してくれるのはとてもラッキーだ。
きっとこのテレビを見た人は『peak hunt5』にかなり興味を持つのではないだろうか?
それは今後の売り上げにも大きく影響するに違いない。
その時優羽は、ライバルの『mountain top7』が若手人気アイドルを起用していた事を思い出していた。
翌日、山荘でフロント業務をしていた優羽の元に井上からメッセージが届いた。
【今日は朝から問い合わせや注文がすごいっす! 大和翔真の影響力半端ないですよ!】
それは井上の嬉しい悲鳴だった。
【それは良かった! 忙しくなりますが頑張って下さいね!】
優羽は笑顔で返信する。
そして優羽は窓の外を眺めた。
美しく紅葉に彩られた木々が、優しく風に揺らいでいる。
時折ハラハラと落ち葉が舞う様子は、とても抒情的で心安らいだ。
その美しい景色を目にしながら優羽は心の中で決心する。
(この仕事は絶対に成功させる! 私は絶対に負けない!)
そして秋晴れの澄み渡った青空を仰ぎ見ると、優羽は大きく深呼吸をした。
コメント
3件
オカサーファーなような、オカ山ガールズ&ボーイズじゃない人気俳優さんの宣伝効果は凄まじい😳👍 店舗開店まで大きなトラブルが起きないよう祈ってます☺️
宣伝広告してくれた芸能人で大幅売れてますね😙オープン迄頑張れ👊😆🎵
岳大さんとの出会いで 長野に帰ってきた時とは見違えるほど自分に自信をつけてしなやかに強くなった優羽ちゃん❣️ このタイミングで大和翔真の宣伝の追い風を受けて"peak hunt5"も絶好調🙌😊👍 ただ西村のブランドが"peak hunt5"のパクリっぽくて嫌な予感が… どうか実店舗がスムーズにオープンできますように🙏🥹🫣