テラーノベル
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蓮司「なあ、みんなさ、“優しさ”ってどういうことだと思う?」
日下部「……相手を傷つけないこと、かな」
遥「……そんなの当たり前だろ」
蓮司「当たり前のことを優しさって言うのか? それだと薄い気がするけど」
遥「薄いも何も、そんなの普通だろ。優しくしようと思わなくても、やらねえと当然だろ」
日下部「……でも、どうしてもできないときもあるじゃん。無意識で人を傷つけること」
蓮司「そうそう。だから俺は優しさって、相手のために“自分が手を抜かないこと”だと思う」
遥「……手を抜かないって、例えば?」
蓮司「気を使うとか、痛みを見て見ぬふりしないとか。便利屋みたいに表面だけじゃなく」
日下部「……俺は、誰かが困ってるときに、理由を聞かずにそばにいることも優しさだと思う」
遥「理由聞かずに……?」
日下部「うん。理由なんて、聞いてもわからないことも多いし。存在を示すだけで救いになることもある」
遥「……それなら、別に優しくなくてもよくね? ただ隣にいるだけで済むなら」
蓮司「そうだな。でも、逆に言えば、“隣にいるだけ”をしてくれる奴は貴重だと思うぞ」
遥「……貴重……か」
日下部「……俺も、遥のことはそれに近い。別に何かしてるわけじゃないけど、そばにいる」
蓮司「いや、俺も観察してるだけで興奮してるわけじゃない。たまには純粋にそういうのもある」
遥「……は? 純粋って何の話だ」
日下部「……いや、安心してほしいっていうか」
蓮司「言葉にすると陳腐だけどな。要は“押し付けじゃない”ってことだ」
遥「……なるほどな。お前ら、そんなんで優しさ語るのか」
日下部「優しさってさ、無理にやるもんじゃない。押し付けると迷惑になる」
蓮司「その代わり、無関心も別の意味で冷たい。微妙なバランスなんだよな」
遥「……面倒くせーな」
蓮司「面倒くさいからこそ、本物の優しさは価値があるんだ」
遥「……ふーん。価値……か」
日下部「でも、俺は今日の雑談だけで、ちょっと優しさを感じたよ」
遥「……俺も、まあ、少しは」