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第6話 強い声、強い言葉
栲から2回目の告白を受けてから、ほんの少しだけ、教室にいやすくなった。自分は、独りじゃない。全員が敵じゃない。
栲と話すことが増えた。といっても、栲が恋歌達のいないところを見計らって、話しかけてくれるようになった。
ただ、恋歌達や、その周りの子からの視線が痛かった。たまに、コソコソと陰口が聞こえることがあった。でも、「気にすることないよ」と、栲が言ってくれるおかげで、何とか耐えていた。
ある日の放課後、忘れ物をした梨柚が教室に戻ると、中から誰かが話す声が聞こえた。
…….恋歌と栲だ。
「栲くんはさ、まだ千季さんのこと好きなの?」
自分の名前が聞こえて、ドキリとする。
「そうだけど。前も言ったけど、俺は桃井とは付き合えない。梨柚のことも諦めてない。」
好きなんだ、と思った。恋歌は栲が好きなんだ。それで多分、告白したんだ。そして栲は断った。好きな子がいるから、と。
「なんで」
震えた声が聞こえた。
「なんで!なんでなんで!私は栲くんが好きなのに!千季さんは栲くんのこと好きじゃないんでしょ?!じゃあなんで私を選んでくれないの?!」
恋歌が叫んだ。耳を塞ぎたくなるような声だった。扉越しに恋歌が泣いているところが想像できた。
「選ぶわけないだろ!!」
栲の叫び声が聞こえた。梨柚は思わず耳を塞いだ。
「選ぶわけない!!自分の好きな人を苦しめて、苦しむところを見て笑うやつ!!選ばれなくて当然だろ!!」
それに、と、栲が続ける。
「梨柚が俺の事好きじゃなくても!!嫌いでも!!俺は諦めないって決めたんだよ!!梨柚が笑えるように、俺が助けるって!!」
あの告白より、力強い声だった。気づけば、梨柚の目から涙が流れていた。
沈黙が続き、やがて、教室のドアが開いた。栲が出てきた。梨柚を見て、あっ、と顔を赤くする。
「……今の、全部、聞いてた?」
梨柚が頷くと、栲は顔をますます赤くした。
それを見て、梨柚は笑った。2人は笑い合いながら、帰って行った。
恋歌は、1人残された教室で、俯いていた。