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異世界召喚されたのに与えられたスキルが『ハズレ』だったので追放されましたが、必ず元の世界に戻る
第202話 - 第202話 別れるのは不安だけどあの二人なら大丈夫だ
31
2,201文字
2026年07月31日
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「やはりこちらに向かっているそうだ」
ポケットから取り出した複雑なレリーフの掘られた円形の装飾品を見ながら、木谷が報告してきた。
まあ通信機か何かだろう。
「速度差は?」
「これは絶望的だな。もっと早く走れないのかね?」
「無理だよ」
こっちも全速だ。疲労も、乾きも、足の痛みも消してある。
ただその分、体調管理もいい加減だ。いつ燃料切れになるかわからないから、水分補給なんかはちゃんと時間を計ってやっているよ。
因みにダークネスさんは馬。ズルい。
そして双子も馬上。これは当然か。
それにあんまりズルいとかは言えないんだよね。咲江ちゃんは早々に走れなくなって、今はダークネスさんと一緒に馬の上だ。
もう完全にグロッキーなので、ロープに縛ってダークネスさんが背負っているような形になっている。
一方で木谷は平然と走りながら、なおも急かしてくる。
こいつのスキルは知っている。物質をダガーにして攻撃するという超攻撃的な奴だ。
それだけに、この速さは召喚者としての成長なのかアイテムによるものなのか気になるな。
後者なら人数分用意してから来いと言ってやりたい。
だけど今は、そんな軽口を叩くのも惜しい。それほどまでに時間が無い。
森林を突っ切り、小川を飛び越え、幾つもの丘を越え、時には崖から飛び降りる。
もう半日以上走りっぱなしだ。出発した時は昼食前だったのに、もう日が昇ろうとしている。
というか、付いてくる馬も凄い。今更だけど、あれ本当に生物か?
俺達の速度は時速50キロにも達しているが、さすがにこの地形だと常にマックスとはいかない。だけど泣き言をいった所で現実は変わらないしな。
だが――、
「ハスマタンまでは残り2時間ほどか。今の内に補給は済ませておけ。本当なら、休息もさせてやりたかったのだが少し残念だよ」
「ふぉんな事を気にするせいふぁくでもないでしょう」
持たされてきたサンドイッチを食べながら軽口を叩く。だけど足は止めない。そんな余裕は無い。
「かなり迫ってきているな。最初は迷走している様子もあったが、こちらを捕捉してからはほぼ一直線だ。目的は、やはり敬一であるという事だな。まあ仕方あるまい。木谷」
「当然、そのためにここに居るのだよ」
ダークネスさんと木谷が考えていることを、分からないほど愚かではないつもりだ。
「では先に行く。荷物を置いたらすぐに来い」
「そんな訳で止まれ。この女は任せるぞ」
咲江ちゃんはまだ目をくるくる回しているが、ここからは確かに俺が担いでいくしかないだろう。
「置いて行って……なんて言えないのが悔しいよ。足手まといになっちゃったね」
「気にする事は無いさ」
そう言いながらおんぶする。それだけで、スキルの悪影響が消えていくのが分かる。
我ながら、因果な体質だ――なんて逃げちゃいけないね。体質じゃない。俺がスケベなだけだ。
今更ながら、女性に対する未練が俺をこの世界に留めているという事実がちょっと恥ずかしい。
では――と振り返った時、もう二人は消えていた。
だが目的は俺が目的地に到着するまでの足止めだ。無理はしないでくれよ。
◆ ◇ ◆
龍平は全速力で走っていた。
自分では全く気が付いていないが、これ以上ない程の笑顔で微笑んでいた。
体が軽い。頭がすっきりしている。全身の神経が研ぎ澄まされ、遥か彼方にいる敬一の心音を確かに感じる。
これほどに気分が良いのは、何時以来だったのだろうか?
だが目の前に障害物がある。無視するか? いや、そんな勿体ないことは出来ない。
今は何でも楽しもう。そう、妨害すらも。
その先には、その分何倍にも膨れ上がった快楽が待っているのであろうから。
◇ ◆ ◇
「それで、今回は真面目に戦ってくれるのかね?」
接近する龍平を、木谷もまた捉えている。
ただ彼とは違って正確にではない。ただ強大な殺気が迫りくることを感じ取っているだけではあるが、それは決して間違ってはいない。
「今更ですまぬが、屋上で戦った時、あれが既に我の限界だったのだよ」
そう言って、ブラッディ・オブ・ザ・ダークネスは騎乗したまま自らの胸板を叩く。
そこから発した音は、虚しく空洞に響く金属音だけだ。
「……予測済みではあったがね。7年前のあの時か」
「覚えてはおらぬ。正直に言えば、お主らの事もよくは覚えておらぬのだ。だが――」
「だが何かね?」
「こうして轡を並べて戦えること、今はとても心地よく思う」
「寒気がするようなことは言わないでくれたまえ。分かっていると思うが」
「安心しろ。お主は敬一がハスマタンに入ったらすぐに離脱せよ。どの道、お主を追う事はあるまいよ」
「……だろうな」
そうは言いつつも、木谷にはその先の展開は読めていた。
ただそれ故に――、
「怪物の本体を倒す事がお前の目的だったのだろう? 何かに誓ったのではなかったのかね?」
「それは敬一に任せるとしよう」
「出来ると思っているのかね?」
「たとえ不可能でも、必ず成し遂げる。理由は分からぬがそんな気がするのだよ」
「意味は分からないが――来るぞ」
もう既に、互いの戦闘圏内に入っていたのだった。
コメント
1件
うわああああ第202話、めっちゃ熱い!!!😭🔥 龍平が笑顔で全速力で迫ってくるところ、マジで怖カッコよすぎ…! ダークネスさんと木谷さんの「今は心地よく思う」の会話にグッときたよ…二人の信頼関係がひしひし伝わってくる…! 敬一が咲江ちゃんおんぶしてるシーンも切なくて、でも彼の優しさが滲み出てて大好き✨ 「俺がスケベなだけ」って自嘲するところにめっちゃ人間味感じる…! 次どうなるか気になりすぎるよ〜!続き楽しみにしてる!!🌸