テラーノベル
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「…………なるほどね」
美花から話の全てを聞き終えた雪が、顔を背けながらフウッと大きく息を零した。
「それにしても、美花が買ったプレゼントを踏み潰すなんて、とんでもない女だね。あんたの事を調べたっていうくらいだから、その女、まだ葉山さんに未練タラタラなんだよ。でもさ……」
雪が美花に向き直ると、珍しく目つきを鋭くさせ、娘と視線をかち合わせる。
「美花は、このままでいいの? 葉山さんに元カノの事を聞かずに、転勤する事を黙ったまま、静岡に行く事、後悔しない?」
久しぶりに見た、雪のまっすぐな眼差しに、美花の表情が微かに強張った。
「…………うん。やっぱり私…………恋愛してはダメだったんだよ……」
「美花……」
美花は、心の葛藤を捩じ伏せるように笑顔の仮面を被ると、雪が何かを言いたげに、薄らと唇を震わせる。
「…………分かった。とにかく、自分が後悔しない生き方をしなさいね」
「うん。ありがとう、お母さん。それよりも、店に戻った方がいいんじゃないの? お客さん、いるかもしれないよ?」
彼女は、沈んだ空気を振り払うように、母に促す。
「あ! そうだった!」
美花は雪に微笑まれると、リビングを抜けて自室に向かった。
自室に戻った美花は、スマートフォンを取り出すと、通知センターには、圭からメッセージが入っている。
美花はメッセージアプリを立ち上げると、彼からのメッセージを開く。
『美花。体調はどう? 仕事がまた忙しくなりそうなんだ。休日出勤もする事になるだろう。それから、改めてチョコレートとネクタイ、ありがとう。センスのいいネクタイで、すごく気に入ったよ』
圭のメッセージを読みながら、憂いを滲ませながら目を通す美花。
ハヤマが開発している楽曲制作アプリ『スマートミュージック』が大詰めを迎えているとはいえ、進捗状況が良くないのだろう。
返信のアイコンをタップすると、彼女も文字を打ち込み始めた。
『圭ちゃん。ネクタイ、気に入ってもらえて良かったよ。私も今日から仕事が忙しくなって、しばらく会えないけど、お互いに頑張ろうね』
美花は本心をメッセージの裏に隠したまま、圭に送信する。
「やっぱり……圭ちゃんには元恋人の事…………言えないし……怖くて聞けないっ……」
美花の視界が潤み、スマートフォンの画面が歪な形に変化していく。
彼女は、やり切れない表情を浮かばせると、机の上に突っ伏しながら、静かに感情を押し潰した。
コメント
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第十四章(18)、読み終わりました……。雪さんが美花に投げかけた「このままでいいの?」って言葉、すごく刺さりました。久しぶりに見たまっすぐな母親の目に、美花が笑顔の仮面を被るシーンが切なくて。圭ちゃんには伝えたいけど言えない怖さ、わかる気がします。最後に机に突っ伏して感情を押し潰す描写が、静かに重くて、胸がぎゅっとなりました🥀
#大人ロマンス