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#大人ロマンス
三月二日。
美花の辞令が正式に下され、掲示板に貼り出された。
「美花! 静岡事業所に異動って…………」
親友でもあり、同じ職場の本橋奈美が、美花を見つけるなり、真っ先に問い掛けてきた。
「うん……。まぁ…………そういう事だよぉ」
美花は目元を垂らしながら奈美と向き合うと、親友は困惑しつつ、アーモンドアイを揺らしている。
「昼休みになったら、なみプーには、ちゃんと話すよ」
「わ……分かった……じゃあ…………後でね」
互いに気まずい表情を見せ合うと、始業時間を知らせるチャイムが鳴り、美花と奈美は、それぞれの持ち場に向かった。
圭とは、メッセージのやり取りは続いていたけど、顔を合わせる事はなかった。
彼は、DTM事業部で開発している楽曲制作アプリが完成するまで、ずっと残業。
美花は、賃貸情報サイトで、静岡事業所がある浜松周辺で部屋探しをしたり、自室で荷物を少しずつまとめたりしていた。
圭の事を考えるのは毎日だけど、彼の背後に、元恋人の存在がチラついていると思うと、気持ちが沈み込んでしまう。
(仕事に集中しなきゃ……!)
リーチフォークを運転しながら、美花は唇を引き結ぶ。
週明けのせいか、たくさんの大型トラックが出入りし、美花はトラックの運転手と入荷する荷物の確認、リーチフォークに乗り、パレットに積まれた荷物を入荷エリアに移動させた。
ひと段落したかと思えば、出荷する荷物を、荷崩れ防止でストレッチラップを巻き付け、リーチフォークを運転して、出荷エリアに移動させる。
(やっと…………落ち着いたよ……)
美花が安堵のため息を零すと、昼休みを告げるチャイムが響く。
「美花っ!」
トラックヤードの前で、奈美が美花を呼んでいる。
「ちょっと待ってて〜!」
美花はリーチフォークを充電エリアに移動させ、コンセントを繋ぐと、ヘルメットを脱いで荷物を取りに行き、奈美の元へ駆け寄った。
「待たせちゃってごめん! お昼食べよ?」
女子二人は、社屋の外にあるベンチに足を運んだ。
コメント
2件
いいのかなぁ。 このまま静岡に転勤になっても。
うわあ、ついに辞令が下りたんですね…! 美花の「まぁ……そういう事だよぉ」って声が聞こえてきそうな、諦めと覚悟が混ざった言い方がすごくリアルでした。そしてリーチフォークの細かい作業描写、物流現場の空気感がしっかり伝わってきて、日常の一片がぐっと立体的になるのが管野さんの手腕だなあと毎回思います。圭くんとのすれ違いも気になるけれど、まずは新しい環境へ踏み出す美花を応援したくなりました。続きが楽しみです!