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※修正・加筆。


「ははっ、やっぱ並べると最高だな」


荒い息を整えながら、誰かがケラケラ笑った。


「でもさ、もっと面白いもんあるんだよなぁ」


日下部が顔を上げると、加害者の一人がにやにやしながら遥の肩を掴んだ。


「こいつ、知ってる? “日下部に手を出すくらいなら俺がやる”って、毎回泣きながら土下座してんの」


「しかも鼻水垂らして、床に擦り付けてさぁ。『殺すなら俺を殺せ』だって。映画みたいだよな!」


日下部の耳に、血のような音が響いた。


「……なに、言ってんだ」


信じられない。遥が――そんなことを?


「ホントだって。なぁ? お前らも見たろ」


「見た見た。ガチで“何でもする”って言ってきてさ。マジで笑った」


「だから最近、こいつばっか弄んでんだよ。日下部守るつもりで、自分から差し出してんだから。最高のオモチャじゃん」


遥はうつむいたまま、何も言わない。

否定も、抗議もない。その沈黙が、逆に肯定より重く響いた。


「……遥、お前……」


声をかけると、遥の肩が小さく震えた。

けれど彼は顔を上げない。ただ、唇を噛んで血を滲ませている。


「こいつさ、この前も“昨日の夜のこと全部話せ”って強要されたの。で、泣きながらペラペラ喋ったんだよな。気持ち悪いくらい正直にさぁ」


「しかも日下部の名前出すと一発で効くんだよ。“やめろ、日下部には何もするな”って、すぐ崩れる。笑えるだろ?」


日下部の頭が真っ白になった。

知らなかった。いや――知らされなかった。

遥はずっと、自分を盾にしていたのか。


「かわいそうだよな、日下部」


ひとりがわざと同情する声を出す。


「お前のせいでコイツ、ずっとこんな目に遭ってんだよ。本人は守ってるつもりかもしれねぇけど、結局はお前が原因」


「どうすんの? 感謝でもすんの? “ありがとな”とか言う? それとも“やめろ”って怒る? どっちも見たいわ」


笑い声が爆ぜる。


日下部は拳を握りしめた。

怒り、恥辱、そして何より――どうしようもない無力感。

遥を守るはずが、逆に遥を壊していた。


隣で、遥がやっと小さく声を漏らした。


「……ごめん」


蚊の鳴くような声。それが、日下部の胸を突き刺した。



「さて……お楽しみの時間だ」


加害者の一人が、わざとらしく手を叩いた。


「お前ら二人、仲良しだよなぁ。だから今日は“共有”してやるよ」


日下部の眉がわずかに寄る。その瞳は警戒を浮かべ、隣の遥を見やる。

だが遥は俯いたまま、一言も発せない。


「なぁ日下部。お前、こいつがどんなことしてたか知ってんのか?」


「え……」


日下部の声が震える。


「知らねぇだろ。だって、こいつ隠してたもんなぁ。お前を守るために、必死に頭下げて、自分だけで受けてたんだよ」


教室にいやらしい笑いが広がる。


「まずはアレだな。自慰のこと、聞いたことあるか?」


「……は?」


「こいつ、小学校の頃からやってんだとよ。しかも“気持ちよかったから続けた”って、自分で言ったんだぜ。なぁ?」


突き刺すように遥の肩を叩く。彼は強張ったまま動けない。


日下部の表情が凍りつく。


「……遥……それ、本当か……?」


返事を待つまでもなく、加害者は続ける。


「まだあるぞ。文化祭で女装させられた話。授業中にローター仕込まれて震えてたこと。体育でも、顔真っ赤にして誤魔化してたんだってよ」


「やめろ……!」


日下部が叫ぶ。


「やめろ? いいのか? 俺らがやめたら、遥の恥ずかしい努力も無駄になるぞ?」


「努力、だと……?」


「そうだよ。全部お前を守るためだ。自分が晒されれば、お前に手を出されないって、そう信じて必死にやってきたんだ。泣きながら“俺がやるから日下部は許してくれ”って何度も頼んでな」


日下部の喉が震える。視線を遥に向けるが、彼は顔を上げられない。

その背中は、ひどく小さく見えた。


「信じられるか? お前の知らないとこで、こいつはずっと“代わり”をやってきたんだぜ」


「でもさぁ……結局どうなった?」


「俺ら、楽しくなっちゃったんだよなぁ」


「そう。遥が必死に庇えば庇うほど、日下部を人質にするのが一番面白くなった。つまり――お前を守るどころか、逆効果だったってわけ」


嘲笑が渦巻く。

日下部の胸の奥に、灼けつくような痛みが走る。


「……遥……お前……」


震える声に、遥は唇を噛みしめた。答えられない。答えれば、その瞬間すら“餌”にされると分かっているからだ。


沈黙が続く。

だがその沈黙こそが、残酷な真実を突きつけていた。


加害者の声が響く。


「どうだ日下部。守られてた気分は? こいつの涙と惨めな声のおかげで、お前は“無傷”でいられたんだぜ」


「なぁ、感謝くらい言ったらどうだ? “ありがとう遥、俺のために汚れてくれて”ってよ」


ざらついた笑いが、教室の壁に反響する。

日下部の視線が揺れる。遥を見つめるが、彼は頑なに顔を伏せていた。

その沈黙が、何より雄弁に――真実を物語っていた。



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