翌朝
カーテンの隙間から差し込む朝陽が瞼を刺激する。
薄目を開けると、すぐ隣で眠る尊さんの横顔があった。
静かに寝息を立てる尊さんの長い睫毛と、その下に落ちる影を見つめる。
昨夜の記憶が一瞬で蘇り、頬が熱くなるのを感じた。
「……ん」
尊さんが小さく身じろぎし、その長い睫毛が震える。
ゆっくりと瞼が持ち上がり、茶色がかった瞳が俺を捉えた。
視線が絡んだ瞬間、心臓が跳ねた。
「起きたか、恋」
尊さんの声は、少し掠れていて、それすらも昨夜の名残を思わせる。
「お、おはようございます……」
俺も掠れた声で挨拶を返す。
すると尊さんの手が伸びてきて、優しく俺の髪を撫でた。
その手つきは、まるで壊れ物を扱うように慎重で、愛おしさが伝わってくる。
「昨日…あんま記憶が無いんだが…無理させなかったか…?」
尊さんの穏やかな問いかけに、俺は首を横に振った。
「全然!その…尊さんの愛情感じれて…楽しかったですから……」
正直なところ、肉体的な疲労感はあるものの、それ以上に心地よい余韻が全身を満たしている。
昨夜の尊さんの熱も、優しさも、すべてが宝物のようだ。
「今日はどうする?」
俺の頭の中で、「どこか行きたい」という気持ちと、「尊さんとまだ一緒にいたい」という気持ちがせめぎ合う。
尊さんは疲れてないのかな、と悩みつつ尊さんを横目で見ると
その表情は穏やかで
「ゆっくりしてもいいし、外に出かけてもいい」
俺の気持ちを察したように言われ、パアっと明るくなる。
そうだ、せっかく尊さんと一緒なんだ。
「…!それなら、久しぶりにどこか出かけませんか?」
即答すると、尊さんの口元が緩んだ。
「じゃあ、お前を連れていきたいところがあるんだが、付き合ってくれるか?」
「連れていきたいところ、ですか…?」
「あぁ。まあ、まずは朝飯だな。」
「はいっ!」
弾んだ声で返事をすると、俺たちはゆっくりとベッドから抜け出した。
◆◇◆◇
それから朝食を終え、東京駅へ向かうタクシーの中で、尊さんに尋ねる。
「それにしても、連れていきたい場所ってどこなんですか?」
「まぁ…ついてからのお楽しみだが、ショッピング街とだけ言っておくか」
その言葉に、俺は期待で胸がいっぱいになる。
そうして数十分後に着いたのは、東京駅一番街地下1F。
エスカレーターを降りた瞬間、目に飛び込んできたのは、その鮮やかさと賑やかさ。
サンリオや有名なキャラクターたちのショップが、まるで宝石箱のように並んでいる。
そこにはすでに非日常の世界が広がっていた。
「ここって……!」
興奮を抑えきれず、尊さんの袖を引っ張る。
周りの喧騒も気にならないほど、この空間に夢中になっていた。
「ああ。キャラクターストリートだ」
尊さんは、俺の反応を見て満足そうに微笑む。
「尊さん…最高すぎます!!ちょうど可愛いぬいぐるみが欲しいって思ってたんです…!」
「ふっ、はしゃぎ過ぎて迷子なるなよ」
「わ、わかってますよ…!」
目の前に広がる夢のような空間に、自然と足がスキップするように進む。
まず最初に目を惹かれたのは、リラックマのショップ。
「わあ……!」
思わず声が漏れるほどのリラックマのオブジェ。
シルクハットを被り紳士な姿で訪問者を迎えている。
店内はファンシーグッズであふれ、リラックマのぬいぐるみが至る所に陳列されていた。
そのゆるい表情を見ているだけで、心が安らぐ。
「うわわ、これ…全部買って帰りたいくらい可愛いです……!」
手のひらサイズのリラックマキーホルダーと両手に収まるサイズのぬいぐるみを交互に見ていたとき
ふと、尊さんの低い声が耳元で響いた。
「そんなに夢中なら何個か買ってやるよ」
驚いて振り返ると、すぐ後ろに立つ尊さんがクスクス笑っていた。
俺が夢中になって品定めする様子を、ずっと見ていたのだろう。
「えっいいんですか?!いや、でも結構高くなりませんか…?」
すると、尊さんはすかさずリラックマのぬいぐるみをひとつカートに入れてくれた。
「お前が喜ぶなら安いもんだ」
その言葉と、俺に向けられた優しい眼差しに胸が高鳴る。
物質的なものよりも、尊さんが俺のためにくれたという行為が嬉しかった。
次のショップへ移動する途中、ガラスケースに収められたフィギュアに目が止まる。
「あっ!これは!」
透明ケースの中に収められた大きなクレヨンしんちゃんのフィギュアが目に入る。
デフォルメされた表情とポーズが絶妙に再現されている。
しんちゃんのおバカだけど愛らしい雰囲気がそのまま立体化されていた。
「なかなか細かい作り込みだな」
尊さんも興味深そうにフィギュアを見つめている。
「尊さんもこういうの好きなんですか?」
「昔はよく見てたな。最近は忙しくてテレビ見る暇もないが」
「じゃあ……一緒に見てみません?今度お店でクレしん映画とか借りてくるので!」
「いいなそれ、楽しみだ」
尊さんの穏やかな笑顔に、二人で過ごす未来が垣間見えた気がして、胸が温かくなった。
次に訪れたのはちいかわらんど。
入り口と看板は明るい黄色で統一されており
「ちいかわらんど TOKYO Station」という大きな文字が視界に飛び込んでくる。
壁の周囲にはカラフルなちいかわワールドのキャラがちらほらと描かれ、すでに幸福感に包まれている。
「わあっ……!」
店内に足を踏み入れると、すぐ真ん中の商品棚でハチワレとちいかわのオブジェが目に入った。
左側で切り株に座るハチワレは、トレードマークの青い耳とアニメでもお馴染みのギターを持って口を開けており
『ひとりごつ』が自動で脳内再生されてしまう。
右側からは、シンプルだけど存在感のあるちいかわが、切り株の上で小さなくまさんポシェットを斜めがけにし、なんとも言えない穏やかな表情を浮かべている。
そのほわんかとした雰囲気に思わず頬が緩んだ。
「そういえばこれ、前に恋が持ってた漫画のやつだろ?」
「そうです!」
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