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コメント
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音楽を作るシーン、とても好きです。圭さんの声や表情を思い浮かべながら一音ずつ紡ぐ美花さんの心情が、優しい曲調のイメージと重なって、胸がじんとしました。「一音入魂」という言葉に彼女の想いがぎゅっと詰まっている感じがして——。でも、体調不良の嘘に心を痛めているところや、千夏さんの影に足が竦む姿に、切なさも募ります。所長に話をするラスト、何を伝えるのか気になりますね🤍
恵
DAWソフトを立ち上げると、美花は圭に聴かせたいと思っている楽曲のファイルを開いた。
モニタリングヘッドフォンを装着し、一音ずつ丁寧に打ち込んでいく。
楽曲を制作していても、美花の中に過ぎるのは、圭の低くて甘やかな声。
彼女の名前を呼びながら、穏やかで優しさに溢れている彼の表情。
『初めて』の事を、美花にたくさん与えてくれた圭。
「落ち込んだ気持ちで…………この曲を作りたくなかったけど……でも……」
美花は、圭への想いを馳せながら、一音ずつ紡ぎ出していくうちに、いつしか楽曲作りに没頭していた。
メロディの打ち込みが終わり、アレンジに取り掛かる。
圭に聴かせたいと思う楽曲は、生楽器の音色を使った優しい曲調がいい。
クラシカルな雰囲気の曲を作るのは、美花も初めて。
気持ちと想いを乗せながら、一音入魂で打ち込みしていった。
翌日のバレンタインデーも、その次の日も、美花は部屋に篭り、音楽を作り続けた。
『美花。体調はどう? 早く良くなるといいな』
『圭ちゃん、ありがとう。まだ本調子ではないから、家でゆっくりするね』
彼女の体調が悪いと思っている圭から、メッセージアプリで連絡が入るけど、正直、嘘を付いているのは心苦しい。
本当なら、圭に会い、元恋人の井河千夏について聞いた方がいい事は、彼女自身も良く分かっている。
でも、彼の背後に、千夏の影が常に付きまとっていると思うと、足が竦んでしまうのだ。
彼へ宛てた楽曲が完成し、美花は完成した曲を空のCD-RWに焼いた後、白い盤面に曲のタイトルと、自分の名前を黒の油性ペンで書き記す。
引き出しから便箋と封筒を取り出し、傍らに放ってあったボールペンを手に取ると、美花は丁寧に一筆認め、CDケースと一緒に、机の隅に置いた。
圭から頂いたネックレスも外し、ジュエリーボックスにしまうと、通勤で使っているバッグの内ポケットから名刺を取り出し、手紙と一緒にまとめた。
週明けの月曜日。
美花は出勤すると、真っ先に事務所へ向かい、所長の谷岡のデスクに足を運んだ。
「所長。おはようございます。あの……お話があるのですが……」
「ああ、浦野さん。おはようございます」
谷岡は彼女の言葉を察したのか、立ち上がると、隣の応接室に行くように促した。
中に入り、美花は静かに扉を閉める。
「浦野さん。話って……」
谷岡が彼女と向かい合うと、美花は僅かに俯いた後、腹を括ったように顔を上げた。