テラーノベル
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「静岡事業所の件ですが…………引き受けさせて頂きます」
「…………了解です。では来月の連休明けから、静岡事業所での業務、よろしくお願いします」
思いの外、早く返事をもらえるとは思わなかったのか、谷岡は、ほんの少しだけ瞠目させた後、神妙な面立ちを覗かせ、会釈をした。
(今の私に必要なのは、DTMで音楽を作る事もそうなんだけど…………生活環境を変える事……)
美花も、悶々とした気持ちを抑えながら、谷岡に笑みを作った。
「では、失礼します」
「浦野さん、ありがとう」
美花は谷岡に深々と一礼すると、応接室を後にした。
わだかまりを燻らせたまま、何とか仕事を終えた美花は、帰宅すると、店の入り口からではなく、裏手にある玄関から家の中に入っていく。
「…………ただいま」
スニーカーを脱ぎ、リビングに入っていくと、母の雪が目を丸くさせながら『うわっ! ビックリした!』と言いながら振り返る。
「お帰り美花。急に家の玄関から入ってきて…………どうしちゃったの?」
厨房にいた母が、バタバタと足音を立てながら、美花に駆け寄ってきた。
「お母さん。来月の連休明けから…………静岡事業所に……転勤になったよ」
娘の転勤話に、母がさらに瞳を見開かせ、口元を手で覆い隠す。
「…………それ、彼氏さんには報告した?」
雪が息を呑みつつ、おずおずと尋ねる。
「……してない。まだ正式に辞令は出てないし…………」
美花の弱々しい声音に、女の勘が働いたのか、母が眉間に皺を寄せた。
「美花。あんた、葉山さんと何かあったんじゃないの?」
「…………っ」
雪に問いただされた美花は、ハッとして言葉を詰まらせると、やはりお母さんには敵わない、と思いつつ、戸惑いながら母と視線を合わせた。
「この前の金曜日。美花、お泊まりで過ごす予定だったのに、体調が悪いって、急に家に帰ってきたでしょ? あの日、もしかしたら葉山さんと何かあったんじゃないかって、思ってたんだよ」
雪が宥めるように言葉を向けると、美花は観念したように眼差しを落とした。
「実はあの日…………」
(お母さんにバレてるみたいだし……嘘をついて隠しても意味ないよね……)
美花は、バレンタインデー前日に起こった顛末と、胸の内を辿々しく話し始めた。
恵
コメント
1件
えーっ美花ちゃん静岡転勤になっちゃったの!?😭 しかもまだ葉山さんに言ってないって…そりゃそうだよね、バレンタイン前日のアレがあったら言い出せない気持ち分かる…。でもお母さんの「女の勘」さすがすぎて尊い…親子の会話にグッときたよ🥺 次の展開気になる〜!!